研究課題/領域番号 |
26600030
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 蛋白質 / マイクロチューブ / 大腸菌 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
近年、蛋白質からなるバイオナノマテリアルの開発に注目が集まっている。研究代表者は、独自の鋳型内交互積層法により中空シリンダー構造の蛋白質ナノチューブを合成し、その内孔空間を利用した様々な機能発現に成功している。本研究では、これまでの知見を大きく発展させ微生物の捕捉に挑戦する。具体的には、大腸菌を効率よくトラップできる蛋白質マイクロチューブの開発を目指す。所望の蛋白質中空シリンダーを合成し、効率的な大腸菌捕捉能、殺菌能を実証する。病原性大腸菌の駆除に応用できると考えられ、人類の健康・福祉に与える波及効果と意義はきわめて大きい。 ①蛋白質マイクロチューブの精密合成と微細構造解析 多孔性ポリカーボネイト(PC)膜(孔径1.0μm)を鋳型とした交互積層法により、蛋白質マイクロチューブを合成した。まず、ポリ-L-アルギニン(PLA)水溶液をPC膜に通過させ正電荷層を作成、続いてヒト血清アルブミン(HSA)水溶液を通過させ負電荷層を形成した。これらの操作を計9回繰り返し、得られた複合膜をDMF溶液に浸漬すると、テンプレートが溶解し蛋白質マイクロチューブ[(PLA/HSA)9]が得られた。中空管の外径/内径/管壁厚/長さを走査電子顕微鏡(FE-SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)観察により測定。単離したマイクロチューブを水中へ戻すと管壁が膨潤することがわかった。 ②大腸菌捕捉能の評価 大腸菌(EK1 E. coli K12株、外径約425nm)分散液に蛋白質マイクロチューブを加え、静置後、LB agarプレート上に播種・培養し、経時的にコロニー形成数を観測した。マイクロチューブと30分以上混合すると、コロニーは1つも形成しないことがわかった。また、大腸菌とマイクロチューブをそれぞれ蛍光色素で染色し、大腸菌がマイクロチューブに捕捉される様子を共焦点レーザー顕微鏡測定から観測した。詳細な条件検討から、捕捉率との相関を解明。最終的には捕捉率100%を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画に従い実験を遂行し、本研究の目標を達成することができた。当初は、大腸菌と相互作用する糖蛋白質の導入と殺菌するための銀ナノ粒子の導入が必要不可欠と考えていたが、いずれも持たないマイクロチューブでも、100%の捕捉と殺菌が達成できた。本成果は、イギリス化学会誌Chem. Commun.に掲載されたばかりでなく、その表紙を飾るとともに、イギリス化学会ニュースChemistry Worldで紹介された。さらに、日本経済新聞(2014.10.22)にも掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
銀ナノ粒子含有蛋白質マイクロチューブの合成と大腸菌殺菌能の評価 前年度に確立した鋳型内交互積層法により、銀ナノ粒子(AgNP)を階層成分として含むマイクロチューブを調製する。銀ナノ粒子の導入により、さらに効率の高い殺菌効果が期待できる。AgNPは負電荷層(2,4,6,8層目)として使用するが、AgNP溶液のみでは形態安定性の高いチューブが得られない可能性もある。その場合、HSAとAgNPの混合溶液を用いて蛋白質マイクロチューブを作成する。内径/外径/管壁厚/長さをFE-SEM、TEM観察により測定。得られた銀ナノ粒子含有蛋白質マイクロチューブの大腸菌捕捉能と殺菌能を評価する。 2年間に得られた成果をまとめ、微生物(大腸菌)を効率よく捕集できる蛋白質マイクロチューブ すなわち“極微小サイズの生物トラップ”の合成法、構造、有効性を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は小額(7,588円)であり、2014年度の予算執行は、計画通りに実施できたと判断している。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、次年度使用額は小額であるため、消耗品(試薬)に充当する。
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