研究実績の概要 |
本研究課題では、プラスチックを含む任意の基板上に塗布製膜・後処理によりナノカーボン系薄膜を作製する技術を開発し、これを半導体素子や透明導電膜などのデバイスに応用することを目指した。方法として、前駆体材料の薄膜を基板上に塗布法によって作製し、これにキセノンフラッシュランプの高強度パルス光を照射して、基板を傷めることなく照射部分の急速加熱焼成を行い、ナノカーボン系薄膜に転換した。この技術を用いてプラスチック基板を含む様々な基板に塗布製膜でのデバイス作製のプロセスを開発することを目指した。 H26,H27年度は主に有機前駆体、特に側鎖に芳香環を有するポリシラン薄膜等にパルス光を照射することにより、グラファイト様な化合物に変化することを明らかにした。 H28年度は引き続き有機前駆体の組成を検討するとともに、この照射技術をカーボンナノチューブの導電膜の性能向上にも応用し、種々の無機化合物を含む塗布膜にパルス光照射を行い、光照射後にシート抵抗が低減することを確認した。当初予定していた配向膜を用いた照射実験は、配向膜作製装置の不調のため十分に実施することができなかった。 本研究課題で得られた結果から、高強度パルス光の照射により、無機および有機化合物の薄膜の化学組成を変化させ、導電性などの電気特性を制御できることが明らかになった。今後この知見を他の材料にも適用し、所望の電気特性を示す薄膜を自在に作製する方法を確立したい。
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