研究課題/領域番号 |
26600038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大野 裕 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (80243129)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近接場ラマン分光 |
研究実績の概要 |
研究開始前において透過電子顕微鏡内その場分光機構により近接場光の形成は実現していたが、近接場光とレーザー光のプローブ面積比が1:10000に対して輝度比は10:1のため、近接場光によるラマン信号はレーザー光によるラマン信号に埋もれていた。そこで、コア径50μmの光ファイバーへの交換および光学系の再設計などその場分光機構を再構築し、透過電子顕微鏡内の顕微鏡観察位置において顕微鏡観察下で直径10μm以下のレーザー光プローブを作成した。計算上、再構築前に比べてプローブ面積比は約1ケタ改善された。さらなるプローブ面積比の改善を目指し、高精度・大開口数のコリメートレンズ機構および開口数の大きな放物面鏡の設計・製作を進めている。また、近接場光の輝度比は微粒子のサイズと励起光のエネルギーに敏感であるため、銀微粒子ごとに光プローブのエネルギーを微調し、共鳴効果により最大輝度の近接場光を形成できるようにした。すなわち、先鋭化させた金属ニードル(曲率半径数100nm以下)を電解研磨で作製し、先端に平均直径50nmの銀微粒子の希薄懸濁液を滴下して銀微粒子を担持させ、構造再現性の高い局在近接場光形成用探針を作成した。さらに、波長可変レーザー光を透過電子顕微鏡内に導入できるようにした。作成した近接場光プローブを用いてダイヤモンドのラマン分光測定を行い、近接場光とレーザー光の輝度比とプローブ面積比の評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
近接場光形成用のレーザー光によりダイヤモンドのラマン信号は測定できたが、近接場光によるラマン信号は確認できていない。すなわち、レーザー光の照射下で銀微粒子を試料に接触させても、ラマン信号の強度の変化は確認できなかった。研究実績で述べたように、研究開始前に比べて近接場光とレーザー光の輝度比は大きくなりプローブ面積比は小さくなっているはずだが、まだ不十分と考えられる。研究対象であるリチウムイオン電池電極のラマン信号はダイヤモンドの信号に比べてかなり弱いため、輝度比とプローブ面積比の改善は不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、さらなるプローブ面積比の改善を目指し、高精度・大開口数のコリメートレンズ機構および開口数の大きな放物面鏡の設計・製作を進める。透過電子顕微鏡外において、CCDカメラなどによるプローブ面積の実測を行い、その情報をフィードバックして最小プローブ面積比になるよう装置の調整・改良を行う。参照試料としてダイヤモンドをTEM内に設置して局在近接場ラマン分光測定し、実測したプローブ面積を用いて近接場光とレーザー光の輝度比を評価する。最大輝度比になるよう、装置の調整・改良を行う。 透過電子顕微鏡観察下における観察領域での局在近接場光ラマン分光法により、リチウムイオン電池の正極材料(Li2Mn3-LiFeO2系酸化物、LiCoO2など)や負極材料(Li4Ti5O12、グラファイト、シリコンなど)の構造特性と充放電(リチウムイオンの移動)による電極の構造変化に起因する振動モードの変化を同一ナノ領域で同時に観測する。全ての結果を統合・整理し、また国内外の畜電池機能に関する理論研究者と意見交換して、充放電・劣化機構を原子・電子レベルで総合的に議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
プローブ面積比の改善を目指し、高精度・大開口数のコリメートレンズ機構および開口数の大きな放物面鏡の設計を進めている。前年度にこの製作を行う予定であったが、精度向上のための再設計の必要があり、まだ完了していない。
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次年度使用額の使用計画 |
プローブ面積比の改善を目指し、高精度・大開口数のコリメートレンズ機構および開口数の大きな放物面鏡の設計を進めている。次年度使用額は、これらの製作費として使用する予定である。
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