研究課題/領域番号 |
26600040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
百瀬 健 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10611163)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強誘電体薄膜 / 3次元メモリ / 超臨界流体 / 製膜 |
研究実績の概要 |
タブレットコンピュータなどのモバイル情報端末に使用される記憶媒体として強誘電体メモリ(FeRAM)が注目を集めている。実用化に向けては,集積度の向上が求められており,シリコン基板表面に3次元微細構造を形成し,その内部に電極及び強誘電体層を積層する必要がある。本研究では,強誘電体特性に優れた複合酸化物薄膜Bi4Ti3O12を高速かつ均一に形成するべく,超臨界流体薄膜堆積法(SCFD)を発展させこれを実現する。今年度は,3次元微細構造内への均一な薄膜堆積を実現するために,微細構造内で起きている反応および拡散現象のそれぞれを定量的に解析し,高速かつ均一な薄膜堆積条件を可能とするプロセスウィンドウを明らかにした。その後,電極材料となるRuO2の検討を開始し,3次元微細構造に対し下部電極としてRuO2を均一形成できるプロセス条件を明らかにした。また,強誘電体特性は下地材料である下部電極の結晶性に強く依存することが知られており,堆積したRuO2に対するポストアニール処理による結晶性向上を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り,3次元微細構造内で起きている反応と拡散という2つの現象を定量的に解析し,3次元微細構造内に均一かつ高速に薄膜を堆積可能な条件を明らかにした。また,最終目標である3次元強誘電体メモリの作製に向けて,SCFDによるRuO2電極形成技術を確立した。強誘電特性を担保するためには,強誘電体薄膜成績時の下地材料であるRuO2電極の結晶性が重要であるが,ポストアニールにより高い結晶性を示すことを確認した。SCFDによる電極形成,強誘電体形成が可能となったことから,最終目標に向けて着実に前進しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の特徴は,SCFDプロセスを用いることにより,これまで難しかった強誘電メモリの3次元化をなすことにあり,3次元微細構造内に均一かつ高速に電極および強誘電体薄膜を形成できるようになってきた。また,強誘電体特性の向上に向けた結晶性制御にも成功しており,3次元強誘電体メモリ形成のための素地が整った。今年度までに得られた知見をもとに,次年度はSCFDにより下部電極,強誘電体薄膜,上部電極を積層し,3次元メモリ形成に取り組む予定である。その際には,電極,強誘電体間での原子の相互拡散による特性低下が起こりうるなど電気特性を指標とし,プロセスのブラッシュアップも図る予定である。最終的には,平坦基板上にも同様の手法により強誘電体メモリを形成し,3次元化の効果を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額であり,実験に使用する原料を購入するタイミングによるものである。したがって,研究進捗には影響しない。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り,次年度に原料を購入し,研究を進める予定である。
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