タブレットコンピュータなどのモバイル情報端末に使用される記憶媒体として強誘電体メモリ(FeRAM)が注目を集めている。実用化に向けては,集積度の向上が求められており,シリコン基板表面に3次元微細構造を形成し,その内部に電極および強誘電体層を積層する必要がある。本研究では,強誘電体特性に優れた複合酸化物薄膜Bi4Ti3O12を高速かつ均一に形成するべく,超臨界流体薄膜堆積法(SCFD)を発展させこれを実現する。 昨年度までに,構成要素となるTiO2およびBi2O3それぞれの製膜特製を取得し,複合酸化物薄膜形成に向けた基礎を築いた。また,TiO2に関してはアスペクト比が100のトレンチに対しても均一に誘電体層を形成できることを明らかにした。さらに,複合酸化物の反応機構を検討し,TiO2製膜の反応速度論を基本とし,Bi2O3を添加元素として取り扱うことにより反応速度論を整理できることを見出した。今年度はこれらの知見を元に,RuO2を電極とし,Bi4Ti3O12を強誘電体層とするキャパシタの形成に取り組んだ。平坦基板上において作成したキャパシタは良好な電気特性を示し,従来の製膜技術と同等の耐電性,強誘電性を示すことを確認した。また,アスペクト比10のトレンチ構造に対して均一膜厚からなる3次元キャパシタの作製に成功した。他方,TiO2キャパシタに関しても取り組み,3次元構造の仕様により比表面積の増分に対応したキャパシタンスの増加を確認した。
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