研究課題/領域番号 |
26600041
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
劉 小晰 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (10372509)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 垂直透明磁化膜 / グラフェン薄膜 / レーザー励起 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は加速された電子に対して、その軌道を曲げることによって制動放射によりレ-ザー励起である。このような目的を達成するために、媒体のグラフェン薄膜の自由電子の平均自由行程(室温ではマイクロオーダー)より遥かに短い範囲に電子軌道を曲げるための周期化垂直磁界の提供が重要である。今年度では、当初計画通り、スパッタ法を用いて、透明度高いフェライト垂直磁化膜を形成した。ここでは、薄膜の表面平坦さを保つと共に、高速成膜可能な対向ターゲット式スパッタ法を用いて、透明度の高いフェライト薄膜を石英グラス基板上に形成した。これまでのフェライト薄膜の場合は、磁気異方性磁界が大きくても10数kOeしかない。しかしながら、本研究のレーザー励起のため、磁界の周期化、つまり垂直磁化膜中の縞状磁区の周期が100ナノ以下にする必要がある。そこで、本研究では、異方性磁界が約50 kOeのコバルトフェライト垂直磁化膜の形成が成功した。このような垂直磁化膜は、約430 emu/ccの高い飽和磁化を示す。磁気力顕微鏡では、約50ナノ程度の縞状磁区構造を確認された。このような超高異方性磁界を持つ薄膜は、理論上に10ナノ程度の周期化磁界の提供ができ、グラフェン薄膜の自由電子の平均自由行程より遥かに短いため、効率なレーザー励起に期待できる。 以上の超高磁気異方性を持つコバルトフェライト垂直磁化膜を用いて、周期化した磁束密度分布の形成を行った。平成26年度では、フェライト垂直磁化膜を細線状に微細加工によって、磁性細線の幅を制御し、シンプルの方法で周期化した磁区構造の形成、つまり磁束密度分布の形成を成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、フェライト垂直磁化膜の磁区構造と磁気異方性磁界の関係は注意しなかった。しかしながら、具体的に研究を進めしたところ、磁区構造と磁気異方性磁界の大きさに注目した。そこで、理論検討及び実験を行ったところ、超高磁気異方性磁界を持つコバルトフェライト垂直磁化膜の開発を成功した。これまでに単結晶基板上に、ヘテロエピタキシャル成長を用いたコバルトフェライト垂直磁化膜報告されたが、本研究では、石英グラスのような非晶質基板上に、垂直磁化コバルトフェライト薄膜の形成を成功し、学術的重要と共に、本研究の目的に応用的重要と言える。 その他検討事項、微細加工を用いた電極の形成、グラフェン薄膜の形成、フェライト薄膜の微細加工に関して、当初計画通り順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度では、当初計画通り、テープ剥離法を用いて、グラフェン薄膜を26年度に作成したコバルトフェライト薄膜上に形成してから、研究室現有のマスクレース露光装置を用いて、微細加工による電極を作製する。これによって、素子を完成させる。さらに、平成26年度整備した顕微鏡を用いて、レーザー発生時の蛍光、波長を定量的に評価する。これによって、磁界印加周期長、素子電圧、発光波長の関係を明らかにする。
|