研究期間中に、スパッタ法を用いて、バリウムフェライト、コバルトフェライト等透明度の高いフェライト垂直磁化薄膜の堆積を行った。特に、特殊な2段階薄膜堆積法や金属性の極薄い(5 ナノメートル以下)FeCo下地層を用いて、垂直保磁力が10 kOe以上と非常に優れた垂直磁化コバルトフェライト薄膜の形成が成功した。コバルトフェライト薄膜の結晶構造を分析した結果、本来立方晶であるコバルトフェライトの結晶構造が、薄膜形成時に、薄膜と垂直方向に結晶軸が縮む一方、薄膜面内方向に結晶軸が伸びる現象を確認した。薄膜の形成方法、組成、酸化状態の制御により、コバルトフェライト薄膜の結晶化温度を室温までに低減を成功した。初めてバリウムフェライト薄膜及びコバルトフェライト薄膜をガラス基板上に形成した。これらの薄膜堆積法では、フェライト薄膜の電子デバイスや素子への工業応用に非常に重要である。これらの垂直磁化薄膜の形成方法に関する研究が注目され、2015年6月にシンガポールで行われた材料国際会議で招待講演として研究成果を発表した。大面積ナノスケールの周期化磁界の発生できる縞状磁区構造の形成に関して、対向式スパッタ装置を用いて、薄膜面内磁気異方性の導入により、方向性の制御できる縞状磁区構造の形成方法を確立した。更に、これらのフェライト薄膜を用いて、テープ剥離法を用いて、フェライト薄膜上に、グラフェン膜の形成を成功した。赤外顕微鏡付きマスクレス露光装置を用いて、電極を作製し、素子を形成した。50MHzから20GHzまでのスピン輸送現象を確認したところ、レーザー発光と考えられる縞状磁区構造の周期(150 ナノメートル)と対応したスピン輸送共鳴現象を確認した。
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