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2014 年度 実施状況報告書

二層カーボンナノチューブのナノからマクロへの展開

研究課題

研究課題/領域番号 26600045
研究機関岡山大学

研究代表者

林 靖彦  岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50314084)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードカーボンナノチューブ / マルチスケール / 線材 / 高強度 / 高導電性
研究実績の概要

本研究は,長尺・高密度で紡糸可能な2層カーボンナノチューブ(CNT)を高含有率で成長するため,①触媒微粒子の制御,紡糸性を高めるためのCNTの成長方向制御する新規な成長概念を開拓する.そして,高強度と導電性を両立する線材にするため,CNT線材作製後②真空中でバイアス印加することでする技術をナノ領域とマクロ領域で開拓する.これらの目標を達成するために,平成26年度は主に2課題を実施した.
①紡糸可能で2層CNTを高含有率で長尺・高密度に成長する技術の開拓
CNTの成長中に極微量水分を添加する従来の方法とは異なり,熱化学気相成長法(CVD)により秒単位で温度やガスの切り替え制御により,水を用いることなく触媒金属の触媒性能を維持して,5分間で0.25mm程度の成長速度を再現性よく実現している.この長尺・高密度CNT基板から直接CNT線材を連続的に引き出すことを確認しており,平成27年度までの達成目標に向けた確かな一歩として大きな弾みとなる成果である.
②ウォール数の少ないCNT間をシームレスに繋ぐ技術
CNT線材はCNTを束ねたものであり,それぞれのCNTは分子間力で結合している.そのため,CNT線材の機械特性は理想的なCNTよりも劣る.このような結合箇所はCNT線材におい物性向上を阻んでおり,接合箇所を低減することによりCNT線材の機械特性の向上を見込める.接合箇所を低減する試みとして,CNT線材へのバイアス印加を行った.未処理,及び高真空下,低真空下でのバイアス印加処理を行ったCNT線材の歪み-応力特性の評価から.未処理のCNT線材の場合,破断強度は501MPa,ヤング率は15.7GPaを示した.高真空下でのバイアス印加処理によって,破断強度・ヤング率はそれぞれ833MPa,28.2GPaと,未処理の試料より大きく向上したことを確認しておいる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①紡糸可能で2層CNTを高含有率で長尺・高密度に成長する技術の開拓
この研究課題において,金属触媒の制御と成長シーケンス制御・最適化により,高い紡糸性を維持しつつ5分間で0.25mm程度の成長速度を再現性よく実現する基盤技術が開発できている.複数の透過電子顕微鏡像(TEM)の解析から,紡糸性を維持しつつ2層CNTの含有率を65%-70%(従来60%程度)まで高めることに成功しており,当初の目標がが達成できていると判断している.この結果は,他の追随を許さないトップレベルの研究成果と言える.
②ウォール数の少ないCNT間をシームレスに繋ぐ技術
この研究課題において,CNT線材作製後に真空下においてバイアス印加することで線材内に多数存在するCNT間未接合箇所を接合する技術を提案している.高真空下でのバイアス印加処理によって,機械強度の指標である破断強度・ヤング率が未処理の試料より大きく向上したことを確認し,当初の目標がが達成できていると判断している.本研究の最終目標である,「高強度と導電性を両立する線材」を目指して研究を進めているが,平成26年度にはバイアス印加がCNT線材の電気物性にどのように影響するかに関する研究までには至らなかった.平成27年度には,機械物性評価に加え,電気物性の評価を重点的に研究を実施することで,最終目標を達成する.

今後の研究の推進方策

今後の研究の進め方において,特に研究計画の変更は予定していない.当初計画の,①紡糸可能で2 層CNT を高含有率で長尺・高密度に成長する技術の開拓,②CNT同士のナノ溶接技術の開拓(ウォール数の少ないCNT間をシームレスに繋ぐ技術)について,平成26年度に引き続き研究を実施する予定である.
①紡糸可能で2 層CNT を高含有率で長尺・高密度に成長する技術の開拓
この研究課題では,高い紡糸性を維持しつつ,2層CNTの含有率が70%を超え,5分間で0.25mm程度の成長速度を超える高速成長技術の確立を目指す.このために,熱CVD法による成長の際の触媒金属の形状制御,成長シーケンス制御の最適化を行う.
②ウォール数の少ないCNT間をシームレスに繋ぐ技術
この研究課題では,平成26年度に実施できなかった,バイアス印加がCNT線材の電気物性にどのように影響するかについて詳細に研究を進める.また,TEMの「その場観察手法」により,ナノ領域で二層CNT同士の再現性の良い接合技術の確立を目指す.

次年度使用額が生じた理由

本研究では,予想以上の研究成果が得られる見通しとなったため,平成26年度中に導入しようとした装置に関して仕様の変更をする必要があり,平成27年度の導入に先延ばしした.

次年度使用額の使用計画

現在得られている研究成果に合わせ,導入しようとする装置の仕様を確定し,研究に支障がでないように速やかに導入する予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] Properties and applications of dry-spun yarns from vertically superaligned carbon nanotube forests2014

    • 著者名/発表者名
      Y. Hayashi
    • 学会等名
      The 4th International Conference on Manipulation, Manu­facturing and Measurement on the Nanoscale (3M-NANO 2014)
    • 発表場所
      Taipei, Taiwan
    • 年月日
      2014-10-27 – 2014-10-31
    • 招待講演
  • [学会発表] Nanoyarn and carbon nanohorns - recent results, achievements and challenges2014

    • 著者名/発表者名
      Y. Hayashi, Norbert Molitor
    • 学会等名
      Nanofair 2014
    • 発表場所
      Dresden, Germany
    • 年月日
      2014-07-01 – 2014-07-03
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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