研究課題/領域番号 |
26600046
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金子 賢治 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30336002)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 画像処理 / 粒界・界面 / ひずみ / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
材料の特性は、原料、純度、形、粒径、結晶構造、内部構造、欠陥、結合状態などの因子に大きく依存することから、これらの因子を制御することにより特性の制御・改善が可能となる。更に、実用材料の多くを占める多結晶材料では、粒界や析出物等との異相界面が材料中を立体的に縦横無尽に存在するため、これらの分布や構造を、立体的にまた原子オーダーで「把握」・「制御」することが、「特性の制御・改善」に繋がると期待される。粒界はその解析装置(透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型TEM(STEM)など)の構造上、2次元像上では1次元の「線」として観察されることが多いが、奥行き方向の情報は欠落し、平均化されてしまう。実次元では、粒界や界面は粒子と粒子の界面、つまり「面」として存在することから、面情報を取得することを試みた。 最近では、超伝導体中に存在する歪みの増加とともに磁束のピン止め力が増加するという報告がなされている。そのため、人工磁束ピン止めセンターの形態や分散状態のみならず、人工磁束ピン止めセンターの存在に起因する超伝導体中の歪みを考慮することにより、超伝導体の電流密度特性におよぼす微構造組織の影響をより正確に計測することが期待できる。超伝導体と人工磁束ピン止めセンターの界「面」における歪みは人工磁束ピン止めセンターのサイズや形態、数密度、格子ミスフィット等によって変化すると考えられる。本研究ではパルスレーザー蒸着法を用いた超伝導体中に導入した人工ピン止めセンターに対して、走査型透過電子顕微鏡による高角環状暗視野像観察を高空間分解能で行い超伝導体と人工磁束ピン止めセンターの界面の結晶方位や界面近傍の歪み分布についての定性・定量解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子分解能の2次元TEM像やSTEM像には厚みコントラストや質量コントラストが含まれてしまうことから、観察領域の試料厚みを数原子オーダーの誤差範囲で一定にする工夫が必要であることが解っている。また、原子分解能像を得るためには、低指数帯からの観察が必須であり、そのための方位あわせの困難さが伴う。更には粒界を挟んだ二つの粒子に整合性が伴わない場合、試料傾斜を行わずに格子像を得ることは困難で有る。 これらのコントラストや困難さを精度良く除去し2次元像を得ることが必須であり、かつ粒界や界面が無欠陥かつ原子オーダーで平坦であることが望ましいことが判明している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、如何に試料厚みを制御したTEM試料を作成するか、また、試料厚みや質量差に起因するコントラストを如何に制御できるかと言った課題が存在することが判明した。今後、これらの課題を克服しつつ、原子オーダーで平坦なTEM試料の作製を視野に入れ、像コントラストの改善を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料の探索に時間を要したため、電子顕微鏡の使用料がそれほどかからなかった事が理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
情報収集や研究成果発表の為の海外出張や国内出張、また電子顕微鏡使用料により多くの経費が支払われる予定である。
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