研究課題/領域番号 |
26600047
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
生津 資大 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90347526)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己伝播発熱 / ナノ粒子 / 機能性材料 / 多孔質シリカ粒子 / 還元 / 溶融塩 |
研究実績の概要 |
2年の研究期間の初年度となるH26年度,まずは霧化加熱自己組織化法を用いて様々な空隙率,空孔径,粒径を持つ多孔質シリカナノ粒子の作製技術の確立に努めた.シリカゾルはφ10nmのものを採用した.ポリスチレンビーズは自作することとし,φ80~400nmで標準偏差10nm未満の均一なポリスチレンビーズの量産技術を確立した. 霧化時の振動数,窒素流速,5ゾーン電気炉の温度分布を変更させて多孔質シリカナノ粒子の出来栄えを評価した結果,今回の実験範囲ではこれらのパラメータの影響は小さかった.また,シリカゾルとポリスチレンビーズの割合や濃度を種々変化させて混合してゾルを作り,綺麗な配列を持つ多孔質シリカナノ粒子の製造条件を模索した.その結果,いずれの条件においてもスラリーの濃度が3%程度が最適であることがわかった.それ未満の場合は空孔が不規則に配列した多孔質ナノ粒子ができ,それより大きい場合は表面がささくれ(突起が多く目立つ)ている多孔質ナノ粒子ができた.さらに,2種類の異なる粒径を持つポリスチレンビーズを様々な条件で配合し,これとシリカゾルを混合して作ったスラリーを用いて多孔質ナノ粒子を作った結果,大きなポリスチレンビーズがあったところにできた穴の周りに小さな穴が規則正しく開いた条件を見出すことに成功した.この条件は,単一ポリスチレンビーズでの最適条件と近いものであった.以上のことから,様々な空隙率と空孔径を持つ多孔質シリカナノ粒子の製造技術を確立することができた.粒径制御は今後の課題であり,サイクロン方式などを採用して粒子サイズの選別を行う必要がある. 多孔質シリカナノ粒子の還元実験を幾つか試みた.溶融塩技術を用いればシリカ中の酸素を減らすことが可能であったが,粒子形状が崩れることが大きな課題である.これを解決すべく,現在,放射光を用いた還元にも取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
霧化加熱自己組織化法で様々な空隙率と空孔径を持ち,綺麗に穴が配列した多孔質シリカナノ粒子の製造技術を確立することができた.粒径の制御が課題であるが,これはサイクロン方式を霧化直後と粒子製造直後の2箇所に配置することで解決可能と考えている.また,シリカの還元を幾つかの手法で実現した.これまでシリカの還元は困難とされてきたが,溶融塩技術を用いればそれが可能であることを実証した.課題は粒子の多孔質性が崩れることであり,溶融塩実験条件の最適化を図るとともに放射光還元などを利用して課題解決を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
多孔質シリカナノ粒子の製造技術の最適化を概ね行うことができたので,これからは(1)粒子の多孔性を維持したまま多孔質シリカナノ粒子の還元を行う実験,(2)多孔質シリカナノ粒子の空隙部分にTiを充填する溶融塩メッキ実験,(3)スパッタを用いたTi/SiO多層膜の作製と発熱性能評価,を主に行っていく.(1)では多孔質シリカナノ粒子を適度な条件で真空アニールすると,表面がシリカゾルの集合体からシリカシェルに変化することがわかっている.これを利用して,還元時に崩れにくい多孔質シリカナノ粒子を作る.また,溶融塩還元に加えて放射光還元にも挑み,多孔質性を極力崩さずにできるだけ酸素を脱離させる実験技術を確立する.(2)では溶融塩技術を用いて通常はメッキできないTiを析出させる技術を開発する.さらに還元後の多孔質シリカナノ粒子(できれば多孔質シリコンナノ粒子)の主に空隙内にTiを析出させる技術を構築する.(3)ではスパッタ技術を用いてTi/SiO多層膜を成膜し,発熱反応を発現できる酸素含有量の実験的調査を行う.この結果をもとに,多孔質シリカナノ粒子の還元の最低条件を決定する.
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