本研究では,癌細胞の次世代非侵襲瞬間温熱治療への応用を目指し,生体材料のTiとSiから構成され,自己伝播発熱反応を発現する発熱ナノ粒子の製造技術を開発した.φ10nm程度のシリカ微粒子とφ100~300nm程度のポリスチレンビーズと純水からなる懸濁液をミスト化し,それを低温から高温への温度勾配を持つ電気炉に通すことで多孔質シリカナノ粒子を製造した.電気炉温度,窒素流量,ポリスチレンサイズおよび濃度を変化させ,粒子の最適製造条件を導出した.次に,溶融塩プラズマ電解法等を用いてシリカ粒子の還元を試みた.その結果,多孔質粒子の形状を崩さずにシリカ中の酸素濃度を27at%まで下げることに成功したが,完全にSiに還元することはできなかった.その後,スパッタや溶融塩メッキ技術で多孔質シリカ粒子の表面と空孔にTiを堆積させた.Ti被覆シリカ粒子に電気刺激を与えた結果,自己伝播発熱反応を示すことを確認した. 多孔質シリカナノ粒子の粒径,空隙率,空孔径等を自由に変化させることができる実験技術を確立した.今後は,様々なサイズならびに空隙率の多孔質シリカナノ粒子にTiを上手く堆積させ,発熱性能の変調を調べることが課題である.
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