研究課題/領域番号 |
26600048
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坂上 知 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60615681)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 電気電子材料 / 有機トランジスタ |
研究実績の概要 |
本年度はフッ素系ポリマーのパターニング技術を用いてナノスケールの撥液バンクを作成することを目指した。フッ素系ポリマーのパターニングのために、フッ素系界面活性剤を様々な市販のレジスト溶液に混入させ、撥液性表面上へスピンコートができる手法を確立した。これによって一般的なフォトリソグラフィとエッチング手法を用いて、基板の撥液性をマイクロスケールでパターニングすることを可能とした。本手法によって作製した撥液バンクによって、塗布型有機トランジスタの半導体層をパターニングしたところ、ソース・ドレイン間のリーク電流を減らすことができた。具体的にはトランジスタのオン/オフ比は未パターニングデバイスの100程度から100,000程度へとおよそ5桁の改善ができた。トランジスタの移動度も1cm2/Vsを超え、優れたデバイスの作製に成功したと言える。また、この技術を用いることで、100ppiレベルのディスプレイのバックプレーン回路を塗布型有機トランジスタによって作製することに成功し、フッ素系ポリマーによる撥液バンクが塗布型集積回路の作製に極めて有用であることを示した。よりナノスケールへのパターン作製のためにUVナノインプリントを用いてフッ素系ポリマーのナノパターニングも検討したが、モールドのパターン転写・剥離条件等の最適化が難しく、現在のところ再現性のあるパターニングには成功出来ていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロスケールでのフッ素系ポリマーの作製には成功したものの、ナノスケールでの撥液バンクは条件の最適化が難しく、現在のところは良い再現性で成功はしていない。ナノスケールでのパターニングには、ナノインプリントを利用することが鍵であると考えているが、PDMSモールドの加圧条件、温度条件、UV照射条件がうまく出せておらず、フッ素系ポリマー薄膜上のレジストに均一なパターンが転写できていないことが課題である。またフッ素系ポリマー層の基板からの剥離も観察されており、ナノインプリント法の改良が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
フッ素系ポリマーのナノスケールでのパターニングに引き続いて挑戦する。特にこれまで検討していたUVナノインプリント法だけでなく、熱ナノインプリント法を検討する。また、マイクロスケールでのパターニングで実績のあるフォトリソグラフィをナノスケールまで落としこむことを検討する。特にDUV光源を有するマスクアライナの使用によって、数百ナノメートルスケールでのパターニングの可能性を検討する。また、フッ素系ポリマーをパターニングする本手法は、塗布法を用いたディスプレイバックプレーンの作製には非常に適していることがわかったため、より高精細な300ppiレベルのディスプレイ作製の可能性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
スピンコーターおよび顕微鏡を購入予定であったが、同じ研究グループ内での別プロジェクトのものを使用することができたために、他の物品の購入を行った。特に、素子を真空中で測定するための真空排気システムを購入した。
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次年度使用額の使用計画 |
ナノインプリント用のモールドを特注品の購入を検討する。高額消耗品であるために、繰越予算と合わせて購入を行う。
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