本研究では、シリコン(Si)ナノワイヤからなる新しい太陽電池材料をSiではない異種基板上、例えば安価なガラス基板上に形成することを目的としている。 そこで、アルミニウム(Al)誘起層交換成長(AIC)法と呼ばれる技術を利用し、石英ガラス基板上へのSi結晶膜の形成実験を行った。具体的には、石英ガラス基板上にAlをスパッタリングにより堆積し、その後Siを堆積する。膜厚比、アニール温度、アニール時間に対する結晶化の条件を透過電子顕微鏡(TEM)観察、電子後方散乱(EBSD)測定およびラマン分光測定により調べ、結晶化条件の最適化条件について調べた。その結果、Al/Siをそれぞれ50nm堆積し、400℃でAICを行なうことで、最大384μmのグレインサイズを達成できた。この値は、これまでにAIC関連で報告されている中で最大のグレインサイズである。この形成されたグレイン内部の結晶配向を調べた結果、面内垂直方向は99%の割合で(111)に配向していることも分かった。更に、形成できたSi多結晶膜をテンプレートとして、その上にアモルファスSi薄膜を形成し、その後のアニールによる結晶化過程を調べた結果、固相エピタキシャル成長の実現を証明できた。更に、AICで形成したSi多結晶膜上にSiナノワイヤの成長を行なうこともできた。以上の結果から、本研究で形成されたSi多結晶膜はガラス基板上に太陽電池を作製する際の良好なテンプレートとして使用できるといえる。
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