研究課題/領域番号 |
26600050
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
原口 和敏 日本大学, 生産工学部, 研究所教授 (10373391)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 貴金属ナノ粒子 / クレイ / ナノ複合体 / 触媒 / 複合ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
「無機粘土ナノシートによる貴金属ナノ粒子/無機ナノ複合体の創製と構造・機能性制御」に関して研究を推進した。本年度は、貴金属ナノ粒子としてPt、PdおよびAuナノ粒子を取り上げ、これらを含むクレイ/貴金属ナノ粒子複合体のin-situ合成および貴金属ナノ粒子担持ヒドロゲルの合成ならびにそれらの構造制御と機能について研究を進め、成果を得た。主な研究成果について概要を下記に示す。 1.申請時に、無機粘土ナノシート(以下クレイと呼ぶ)が貴金属化合物を還元して微小な貴金属ナノ粒子とクレイからなるナノ複合体が形成されること(Langmuir, 2013)、また、フッ素変性したクレイを用いることで、極めて高温でも安定なナノ複合体が得られること(Phys.Che.Chem.Phys.2013)を見いだしていた。本年度は、これらの成果を発展させ、2種の貴金属ナノ粒子からなる明確なコアーシェル構造を有するナノ複合体の合成に成功した。具体的には、Pd(core)-Pt(shell)、Au(core)-Pd(shell)およびAu(core)-Pt(shell)からなるBimetallicナノ複合体を、いずれも層状剥離クレイとアスコルビン酸の存在下、室温でOne-Pot合成することに成功した。そのナノ構造をTEM、EDX分析などから明らかにすると共に、有機反応に対してこれらが極めて優れた触媒活性を示すこと(特にAu-Pd/clay-NC)を明らかにした。 2.有機-無機複合ヒドロゲル(以下、NCゲル)中に白金化合物を導入することにより、還元剤添加なしで、Ptナノ粒子担持NCゲルが室温でin-situ合成された。また、得られたPt-NCゲルが優れた触媒活性を示すことを確認した。 3.クレイ存在下で合成したPtナノ粒子は環境により安定性が変化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.クレイ存在下での還元により、コア-シェル構造を有するBimetallic貴金属複合ナノ粒子の室温、One-Pot合成に成功した。また、コアーシェル型ナノ粒子の成分をPd-Pt、Au-Pd、Au-Ptと変化させることができ、いずれも(特にAu-Pd/Clayナノ複合体)が優れた触媒活性を示すことを見いだした。 2.クレイの還元能力を用いることで、微小な白金ナノ粒子を高分子-クレイネットワーク中に均一に担持させた「Ptナノ粒子担持NCゲル(Pt-NCゲル)」の室温in-situ合成に成功した。また、安定なPtナノ粒子分散液も得た。これらはいずれも有機反応に対して高い触媒活性を示すことを確認した。 3.その他の研究項目(例えば、得られたナノ複合体の安定性評価、機能性評価)に対しても、研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに達成した成果をもとに、更に以下の点に重点をおいて研究を進める。 (1)貴金属ナノ粒子/クレイ複合体の形態、分散安定性、熱安定性、耐久性の評価と制御。これらは、ナノ複合体を実用化するために必要不可欠であり、また、それらを制御することで、より高性能な貴金属ナノ粒子/クレイ複合体を実現できる。 (2)異なる有機-無機ネットワーク中への貴金属ナノ粒子の導入(in-situ合成)を達成する。これにより、貴金属ナノ粒子/クレイナノ複合体が種々のフィルムや繊維の中に導入され、高比表面積、高活性を有する有効な貴金属ナノ粒子/クレイ/高分子複合体が実現できる。 (3)クレイ存在下での貴金属ナノ粒子のin-situ合成機構、Bimetallicコアーシェル構造の形成機構、有機-無機ネットワークとの相互作用などを明らかにする。
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