研究課題/領域番号 |
26600053
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
前之園 信也 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (00323535)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多機能ナノ粒子 / 超常磁性 / プラズモン散乱 / バイオイメージング / 磁気分離 / 細胞内小胞 / オートファジー / マクロピノサイトーシス |
研究実績の概要 |
平成26年度は、磁性とプラズモン散乱特性を併有する糖鎖修飾デュアル機能ナノ粒子の創製を行う計画であった。当初の予定通り、磁性とプラズモン特性を兼ね備えたFePt@Au@Agダブルシェル型ナノ粒子やAg@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子を開発し、その表面をラクトースを導入したポリリジンで被覆した糖鎖修飾デュアル機能ナノ粒子を創製した。特に、Ag@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子は、磁性およびプラズモン散乱特性の両面において優れており、この粒子を用いてリポソームの磁気泳動およびプラズモンイメージングを行った。この実験結果から、細胞内小胞のリアルタイムイメージングと磁気分離が原理的に可能であるということを確認した。さらに、A431細胞を用いてマクロピノサイトーシスによって細胞内へ、Ag@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子を取り込ませることが可能であることも確認した。 Ag@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子に関する一連の研究成果は、Full PaperとしてLangmuir誌に掲載されたほか、アメリカ材料科学会(MRS)、欧州材料科学会(E-MRS)、国際材料学会連合アジア国際会議(IUMRS-ICA)など計6件の国際学会発表及び7件の国内学会発表として結実している。学会発表に関する特筆すべき事柄としては、2014年8月に福岡で開催されたIUMRS-ICA2014での研究奨励賞受賞、及び2014年11月にベトナムで開催されたIWAMSN2014でのベストポスター賞受賞が挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第一の理由は、当初磁性-プラズモンデュアル機能ナノ粒子としてFePt@Agコアシェル型ナノ粒子やFePt@Au@Agダブルシェル型ナノ粒子のみを予定していたが、それらに加え、さらに優れた性能を有するAg@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子の創製に成功したことにある。 第二の理由としては、細胞内小胞のモデルとしてリポソームを用い、磁気泳動実験やプラズモンイメージング実験を既に実施し、細胞内小胞のリアルタイムイメージングと磁気分離が原理的に可能であるということを当初予定より前倒しで確認したことが挙げられる。 第三の理由は、当初の計画には含まれていなかったものの、A431細胞を用いてマクロピノサイトーシスによって細胞内への取り込みが可能であることを確認した点にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、リポフェクション法による磁性-プラズモンデュアル機能ナノ粒子の哺乳培養細胞の細胞質への送達技術の確立に注力する。リポフェクションの際、ラクトースをナノ粒子と共存させる(ラクトースを導入したポリマーで表面修飾したナノ粒子を用いることのほかに、ラクトースそのものを遊離分子としてナノ粒子と混合することも考えている)ことで、初期エンドソームのruptureが起きれば、その時にラクトースが細胞質に漏出し、オートファジーを誘導できると考えている。また並行して、マクロファージを用いたファゴサイトーシスによるナノ粒子の取り込み実験も計画している。その際、IgGで表面修飾したナノ粒子を用いる必要があるため、ナノ粒子表面に特異的なタンパク質を結合させたナノ粒子の作製技術の開発も行う。バイオサイエンスへの幅広い応用を考えた時、おそらくこれが極めて重要な技術となると思われる。 平成28年度以降には、実際に哺乳培養細胞内へナノ粒子を導入し、オートファジーの動態イメージングと磁気分離を行う。単離したオートファゴソームはプロテオーム解析に供してオートファゴソームに存在するタンパク質のプロファイリングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を予定より安価で調達できたため、僅かながら未使用額(\1,581)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
Ag@FeCo@Agダブルシェル型ナノ粒子の合成に関する実験のための有機溶媒(ヘキサン)の購入に充てる。
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