研究課題
本研究の目的は、従来単離精製が困難であった細胞小器官を短時間に単離する新たな分離手法を提供することにある。細胞小器官の一般的な単離法には遠心分離があるが、長時間の超遠心工程が必要なためタンパク質の膜からの脱離や変性が問題となるほか、比重に差が無い異種の細胞小器官の分離は原理的に困難である。一方、磁気分離は、細胞やタンパク質の分離には従来から利用されている技術であるが、細胞小器官の磁気分離については報告例が極めて少ない。その主な原因の一つとして、従来の磁気ビーズは超常磁性酸化鉄からなるサブミクロンサイズの大きな粒子なので、ファゴサイトーシスのような特殊なエンドサイトーシス経路でしか細胞に取り込まれないため、細胞小器官の単離という観点からは汎用性がないことが挙げられる。我々は、細胞小器官を高選択的に磁気分離する汎用的技術に必要な磁気ビーズの条件として、粒径30nm以下、長時間イメージングが可能、優れた磁気特性、高い表面機能化の自由度の4つを掲げ、これらの必要条件全てを満たす磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子を創製した。モデル小器官としてオートファゴソームを選択し、このハイブリッドナノ粒子を用いてオートファゴソームの磁気分離に挑戦した。ハイブリッドナノ粒子の表面をポリ-L-リジンで被覆し、cos-1細胞にトランスフェクションした後、ナノ粒子の細胞内分布の培養時間依存性を調べたところ、ナノ粒子の局在が、初期エンドソーム、オートファゴソーム、オートリソソームへと移行する様子の可視化に成功した。オートファゴソームにナノ粒子が取り込まれた時点でホモジナイザーを用いて細胞膜のみを破砕して磁気分離を行い、磁気分画成分をウェスタンブロッティングしたところ、LC3-II(オートファゴソームマーカー)の濃縮が観察されたため、オートファゴソームの磁気分離に成功したことが確認された。
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