研究課題/領域番号 |
26600056
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 秀治 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00312611)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / ダイオード / 高温センサ / センサ読出回路 / MEMS |
研究実績の概要 |
高温環境下ではSiの電子回路が利用できないため,センサからの信号読み取りに従来の方法が利用できない。本研究では,この課題に対して,高温環境にはセンサと最低限の素子のみを設置し,配線を介して室温環境に設置するSiの信号処理回路に繋ぐ新しい着想を実証する。具体的には,高温環境には高温に耐えられる容量型センサ,SiCダイオードブリッジ,キャパシタンスを設置し,そこから配線を室温環境に伸ばし,Siの信号処理回路に繋げる。 そのため,まず,pn接合SiCダイオードが400~600℃の高温でも動作することを確認し,各温度における電流電圧特性を測定した。オーミックコンタクトのメタライゼーションのためNiとPtを比較利用し,Ni電極は酸化で劣化するのに対し,Pt電極は600℃でも安定してダイオード動作をさせられることを実証した。 次に,SiCダイオードをを用いてブリッジ回路を構成する実装法を開発した。ダイボンディングには耐熱性導電ペーストを利用し,そのキュアのレシピを最適化した。ワイヤボンディングにはNi線のウェッジボンディングを利用した。そして,SiCダイオードブリッジをサファイア基板上に構成し,耐熱キャパシタを用いてブリッジ回路の400℃までの高温動作を確認した。 さらに,耐熱SiC MEMSセンサの加工技術を開発するために,センサ基本構造の試作を試みた。具体的には,プラズマCVDやRIEによってSiC薄膜を加工し,SiCビームによってSiマスが支えられた構造を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹は,高温で用いる作動型容量センサの読出しにpn接合SiCダイオードのブリッジ回路を用いる方法を実証することである。これに対して,本年度は,Ptメタライゼーションのpn接合SiCダイオードが600℃の高温でも安定して動作することを確認した。そして,高温実装技術として耐熱性導電ペーストを用いたダイボンディングとNiワイヤボンディングを開発して,SiCダイオードブリッジ回路を構成し,これが400℃の高温でも動作することを確認した。以上によって,本研究の根幹部分を実証できたと考えている。平成27年度,このSiCダイオードブリッジ回路のセンサへの適用性を実証すれば,研究目的を達成できるため,おおむね順調に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,Ptメタライゼーションのpn接合SiCダイオードが600℃の高温でも安定して動作,そして,SiCダイオードブリッジ回路が400℃の高温でも動作することを確認した。平成27年度には,このSiCダイオードブリッジ回路がセンサに適用可能であることを確認することを目的とする。そのために,簡易構造の作動型容量センサを用意し,これとSiCダイオードブリッジ回路を接続して,センサ信号の読出しを実証する。また,前年度,実測したSiCダイオードの特性を用いて,センサ読出し回路の動作を回路シミュレーションによっても確認する。以上によって,本研究の目的である高温環境に設置されるMEMSセンサからの信号読み出し技術の実証を達成する計画である。 これに加え,耐熱性MEMSセンサを作製するための基本技術の開発も行う。平成26年度から引き続き,プラズマCVDやRIEによってSiC薄膜を加工し,作動型容量センサの基本構造を試作する。試作を通じて,加工技術の課題を明らかにし,その解決をはかることで,耐熱性MEMSセンサの実現に必要なキー技術を獲得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を進めるにあたり必要な物品の在庫が研究室にあったため,本年度は予定していた物品購入を行わなかった。また,萌芽的研究を開始して1年目であったため,今年度の学会発表を見送り,その結果,旅費を執行しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた研究を遂行するために,必要な物品を購入する。また,センサー開発のための微細加工を学内の共用施設で行うため,その利用料を負担する。本研究に利用予定である装置が,最近,不調となり,その修理等に費用がかかる可能性がある。
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