研究課題/領域番号 |
26600060
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
式田 光宏 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (80273291)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | MEMS・NEMS |
研究実績の概要 |
本研究では,無痛かつ安全・簡便な次世代投薬法の実現を目的として,生分解性高分子材料による経皮吸収剤マイクロニードルの実現を目指した.本年度は,下記(1)(2)の両課題について取り組み,矢尻分離型マイクロニードルにおける「矢尻の先鋭化」及び「矢尻分離型構造」に関する二つの加工プロセス技術を確立した.以下にその詳細を述べる. (1) 矢尻分離型生分解性マイクロニードルの作製 ① 三角錐形状によるSi製金型の先鋭化:本テーマでは,矢尻分離型生分解性マイクロニードルの原型となるSi製金型の先鋭化を図ることを目的とした.具体的な手段として,本テーマでは,加工誤差に寄らず,必ずニードル先端部が点で結ばれる新たな三角錐形状のSi製金型を作製する加工プロセス技術を確立した.ホトリソグラフィと単結晶Siの結晶異方性エッチングを用いることで,常にSi製金型の先端を1.0ミクロン(曲率半径)以下に先鋭化できることを確認した. ② 二段階モールドプロセスによる矢尻分離型生分解性マイクロニードルの作製:本テーマでは,Si製金型を用いて矢尻分離型生分解性マイクロニードルを実現する加工プロセス技術の確立を目指した.具体的には,生分解性高分子材として,液状「コラーゲン」「ヒアルロン酸」「ゼラチン」を用い,モールドプロセスにて,生分解性マイクロニードルを作製する加工プロセスを確立した. (2) 液状高分子によるモールド内でのニードル先端部形成モデルの構築 本テーマでは,液状高分子をモールド内に導入した際に,先端部での最終形状がどのようになるかを検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書記載の研究計画に従い,本年度は,特に(1)矢尻分離型生分解性マイクロニードルの作製に挑んだ結果,①三角錐形状によるSi製金型の先鋭化を提案するとともに,ホトリソグラフィと単結晶Siの結晶異方性エッチングを用いることで,常に三角錐形状のSi製金型先端を1.0ミクロン(曲率半径)以下に先鋭化できることを確認した.また,②二段階モールドプロセスを用いることで矢尻分離型生分解性マイクロニードルを作製できることを確認した.(2)液状高分子によるモールド内でのニードル先端部形成モデルの構築に関しては,液状高分子をモールド内に導入した際に,先端部での最終形状がどのようになるかを検討した.以上の結果より,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,引続き平成26年度の課題を検討しつつ,矢尻分離型生分解性マイクロニードルの皮膚内への穿刺実験を併せて実施し,その有用性を評価する.以下にその詳細を述べる. 矢尻分離型生分解性マイクロニードルの皮膚内への穿刺評価 本テーマでは,先ず,穿刺力を評価するための計測システムを作製する.具体的には平行板ばねからなる荷重―変位測定装置を組み上げる.本装置では,板ばね先端部でステージ上においた皮膚と生分解性マイクロニードルとに荷重を加え,そのときの変位量をレーザ変位計で計測する.なお,生分解性ニードルに加えた荷重は平行板ばねの変形量から算出する. ①先鋭度と穿刺力の関係:本テーマでは,上記穿刺力評価システムを用いて,「先鋭度と穿刺力との関係」を明らかにする.ニードル先端部の先鋭度及び穿刺痕評価には走査型電子線顕微鏡を使用する.また,モールドプロセスにて複製した「生分解性ニードル」と「Si製ニードル」との穿刺力とを比較評価し,穿刺という観点から生分解性ニードルの可能性を定量的に評価する. ②矢尻分離効率の評価:本テーマでは,上記結果を基に,穿刺荷重に対する皮膚内への矢尻分離効率を評価する.皮膚内での矢尻留置を確認し易いように,本実験では,矢尻部分に薬剤を見立てた染色剤を添加する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度予算して,当初,物品費800千円,旅費500千円,その他100千円を計上していた.作製に必要な消耗品を厳選したために,消耗品支出を抑えることが可能となった.また,旅費に関しては,平成27年度開催の国際会議に申込(採択済み)をしたために,平成26年度旅費の一部を平成27年度旅費に充当することにした.以上の結果から,平成26年度残余金(残余金合計991,267円)を平成27年度予算に充当することにした.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度残余金の内,446,927円に関しては,平成27年度予算の物品費に充てる予定である.具体的には,矢尻分離型生分解性マイクロニードル開発費に充当する.またそれ以外の平成26年度残余金(544,340円)に関しては,平成27年度旅費及びその他に充当する予定である.
|