本研究では,無痛かつ安全・簡便な次世代投薬法の実現を目的として,生分解性高分子材料による経皮吸収剤マイクロニードルの実現を目指した.本年度は,平成26年度に引続き(1)の課題を検討しつつ,(2)矢尻分離型マイクロニードルの皮膚内への穿刺実験を併せて実施し,その有用性を評価した.以下にその詳細を述べる. (1) 矢尻分離型マイクロニードルの作製 本テーマでは,二段階モールドプロセスによる矢尻分離型マイクロニードルの作製を検討した.具体的には,硬化後の硬度が異なる三種類の樹脂材(生分解性材料:2種類,高分子材料:1種類)を用いて矢尻分離型マイクロニードルを作製した. (2) 矢尻分離型マイクロニードルの皮膚内への穿刺評価 平行板ばねからなる荷重―変位測定装置を用いて穿刺における先端形状依存性を確認した.なお,先端には,八角錐,三角錐,菱形錐の三つの異なる錐体形状を用い,これらの穿刺性を比較検討した.その結果,八角錐形状が最も穿刺性に優れていることを明らかにした.また,Si製ニードルと生分解性ニードルとの穿刺性を比較し,生分解性ニードルの場合,穿刺時にニードル自体が弾性変形している可能性があることを明らかにした.更に,上記で試作した矢尻分離型マイクロニードルを人工皮膚(皮膚と弾性率が近いシリコーン樹脂を使用)内に挿入し,矢尻先端部分を人工皮膚内に完全に埋め込み,かつ分離できることを確認した.また穿刺に必要な荷重値を計測評価した.
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