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2014 年度 実施状況報告書

ナノギャップの熱物性計測デバイス

研究課題

研究課題/領域番号 26600062
研究機関京都大学

研究代表者

土屋 智由  京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60378792)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードナノギャップ / 熱アクチュエータ / 静電アクチュエータ / へき開破壊 / 単結晶シリコン / SOI
研究実績の概要

本研究では数~10数nmの間隔で数μm角のナノギャップの熱移動,電気特性およびこれらの量子効果を測定するためのナノギャップ計測デバイスを開発し,特にナノギャップの熱伝導特性を明らかにすることを目的とする.この技術は高効率の熱発電デバイスに展開できると考えている.具体的には単結晶シリコンのへき開を利用して,均一かつ高いアスペクト比(面積/ギャップの比)を有するナノスケールのギャップをシリコン構造体に作製し,このギャップを静電駆動型アクチュエータ/センサからなる可変ギャップデバイス上に構築し,ギャップ間隔をnmオーダで制御しながらギャップ間の熱,電気伝導,作用力を測定する.
本年度はまず熱膨張アクチュエータを一体化したナノギャップ創製デバイスを設計,試作し,このデバイスでのへき開破壊の実現を目指した.Silicon on insulator(SOI)ウエハの厚さ5μmで面方位(110)の単結晶シリコンデバイス層に<111>方位に形成された梁構造を作製し,幅,高さそれぞれ5μmのへき開面を得る.単結晶シリコンの引張強さは3~4GPaであることを考慮してデバイスの設計をしたところ,へき開破壊を確実にするためには切欠きを形成して応力集中させる必要があることが明らかになった.応力集中係数を最大にする設計を検討し,切欠きの先端曲率を小さくするために複数のリソグラフィの重ねあわせでこれを実現する手法を考案している.実際に作製した曲率は200nm程度で単純なリソグラフィによる切欠きの4分の1程度であった.
実際に作製したデバイスでへき開破壊を確認し,ギャップ創製に成功した.一方で,デバイス作製中に単結晶シリコンの表面層に腐食による表面荒れが発生し,プロセスの改良が必要である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の目標として,ギャップ形成法の確立,熱移動特性測定法の提案,ギャップ形成デバイスの試作を挙げており,これらすべてを完了した.
ギャップ形成においては発生力の大きな熱型アクチュエータをナノギャップ熱移動測定デバイスに一体化している.さらに,切欠きを導入して狙った場所でのへき開破壊を実現する方法を提案した.
熱移動特性測定は一方にマイクロヒータ,他方に温度センサを組み込み,ギャップ間隔制御は微小変位の制御能力に優れた静電駆動アクチュエータを組み込むことで熱移動特性のギャップ間隔依存性が測定可能な構成を提案した.
これらのギャップ形成デバイスを設計,解析し,目標とした特性が得られる見通しを得たうえで(110)方位のSOIウエハを用いてデバイスを試作し,熱アクチュエータによるへき開破壊を実現した.
以上の様に本年度の目標は達成しており,おおむね順調に進展していると判断する.

今後の研究の推進方策

次年度は計画通り,ナノギャップの熱移動,電気特性の測定を行う.この中で今年度作製したデバイスの改良をまず実施する.改良点としては以下の点を考えている
1.作製プロセスの改良:デバイスの作製プロセスの最終段階の犠牲層エッチングによる構造体のリリースにおいて,電極の金とSi間に電流が流れ陽極酸化によるダメージが発生した.これは,本来気相で行われているはずの犠牲層エッチング中に水が凝縮したものと考えており,エッチングプロセス条件の改良,電極の変更などを検討する.
2.熱型アクチュエータを他の手法,外力印加による破壊に変更することを検討する.熱型アクチュエータの一体化によって,効率的にギャップが生成できる一方で温度上昇の影響,構造体の不要な部分での破壊,へき開面創成後の熱型アクチュエータの分離が問題となっている.このため,新しいへき開法を検討する.
3.ギャップ計測:変位計測のため静電容量型変位センサを一体化する.

次年度使用額が生じた理由

試験デバイスの設計に予定よりも時間がかかり,試作の回数が少なかった.また,計測装置の購入に当たって,既設の装置を借用して測定して評価し,最適な計測装置を選定してから購入することとしたため,備品費を使用しなかった.
デバイスの試作に共用設備を用いたが,他の実験と同時に行い,そのプロジェクトで経費を支払ったため支出がなかった.実験補助者を雇用する計画であったが,来年度に短期間,博士研究者を雇用することとしたため支出を保留した.

次年度使用額の使用計画

計測装置は早急に選定して購入する.次年度前半に,博士研究者を短期間(3か月)雇用して,実験を進める予定であり,謝金をこれに用いる計画である.また,試作費用.さらには学会発表などで使用することを計画している.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] シリコンの機械的信頼性2015

    • 著者名/発表者名
      土屋 智由
    • 雑誌名

      機械の研究

      巻: 67 ページ: 183-190

  • [学会発表] 一本鎖DNAにより孤立アセンブルした単層カーボンナノチューブの電気特性2014

    • 著者名/発表者名
      外薗洸佑, 鈴木淳也, 平井義和, 土屋智由, 田畑修
    • 学会等名
      第6回「集積化 MEMS シンポジウム」
    • 発表場所
      松江
    • 年月日
      2014-10-20 – 2014-10-22
  • [学会発表] 多段ICP-RIEプロセスにより一括作製したシリコンナノワイヤのMEMS引張試験2014

    • 著者名/発表者名
      土屋智由, 鈴木淳也, 平井義和, 田畑修
    • 学会等名
      日本機械学会2014年度年次大会
    • 発表場所
      東京電機大学, 東京
    • 年月日
      2014-09-07 – 2014-09-10
  • [備考] へき開破壊によるナノギャップ創製

    • URL

      http://www.nms.me.kyoto-u.ac.jp/2015/03/nangapdevice/

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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