本研究では数~10数ナノメートル間隔で面積が数マイクロメートル角を有する対向する電極で構成された空隙,すなわちナノギャップの熱移動,電子移動およびこれらの量子効果を測定するためのナノギャップ計測デバイスを開発し,特にナノギャップの熱伝導特性を明らかにすることを目的とした.この技術は高効率の熱発電デバイスに展開できることを想定している. 提案する計測デバイスは単結晶シリコンのへき開を利用して,均一かつ高いアスペクト比(面積/ギャップの比)を有するナノスケールのギャップをシリコン構造体に作製し,このギャップを静電駆動型アクチュエータ/センサからなる可変ギャップデバイス上に構築し,ギャップ間隔をnmオーダで制御しながらギャップ間の熱,電気伝導,作用力を測定する. 本年度は昨年度設計した熱膨張アクチュエータを一体化したナノギャップ創成デバイスを再試作した.特に,昨年度問題になった犠牲層エッチング中の構造へのダメージを低減した.結果としてへき開部の強度が向上したため,ナノギャップの創成(破断)条件が変化したが,ナノギャップが形成された. へき開によって創成したナノギャップの電圧‐電流特性を測定したところ,電圧20V以上で数10マイクロアンペアの電流が観察された.また,電圧と電流の関係はFowler-Nordheim Tunneling現象とみられる特性が得られ,ギャップ間の電子放出が確認されたと考えている.現在,ギャップを変化させながらの電圧電流特性を測定することで,この現象がギャップによるものであるかどうか,現象が面で発生しているかどうかなどの検証を進める.
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