本研究では,複数の微小流路にガスや液体を流して放電を独立制御し,複数種類のガスプラズマや液体の噴流(ジェット)を微小空間で同時かつ任意の組み合わせで生成可能なアレイ型多機能放電ジェットデバイスの実現を目指した基礎研究を推進した。高密度・多種類の放電ジェットを独立制御することで ,ジェットアレイ全体の形状,相対位置,構成ガスの分布や照射の時系列関係を自在に変化させると考えられることから,先端医療分野における患部へのプラズマ照射等への応用が期待できる。また,工業分野においては,超精密サイズでの「切削」「表面処理」「堆積」など新加工分野への応用可能性が高い。 当該期間においては,本技術の実現可能性と有効性の検証を目指し,微小流路構造,ならびに放電電極アレイの製作技術からデバイス実装手段の検討,噴流発生原理の検討と検証までを行った。 微小流路と電極対の高密度集積によるアレイ型多機能放電ジェットデバイスを実現するにあたって,要素となる技術は微小流路の形成と放電電極構造の形成,さらには,供給するガス等の流体流量を精密制御する微小バルブ構造が必要である。そこで本研究では,最終目標とするデバイスに必要な性能を有する各要素の実現と評価を行った。微小流路と電極アレイの形成については,単結晶シリコンの微細加工とガラスの陽極接合によって高密度に実現し,放電による各種ガスプラズマの生成に成功した。また,高速噴流を発生するデバイスであるため,高圧流体の精密な流量制御が不可欠である。そこで,本研究ではシリコンとガラスの陽極接合によって形成したバルブシートに,組み入れる形のスライドバルブをMEMS技術で新規に開発し,1MPaの高圧力下での動作と精密な流量制御を両立する高性能微小バルブを新規に実現することに成功した。以上より,アレイ型多機能放電ジェットデバイスを構築する技術の基礎を確立できたといえる。
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