従来の細胞をモデル化する研究は、単一細胞における機能(代謝や自己複製など)を再現し理解するために単一のリポソームを細胞容器として利用してきた。これに対して、本研究では生体組織の協奏的な機能発現を再現・理解することを究極的な目標とし、単一細胞モデルとなるリポソーム同士を接着することで「細胞集合体モデル」を創成することを目的とした。申請者の均一径リポソームアレイ形成研究を基盤技術(若手B 平成23~24年度)として、本研究では分子間相互作用を介してリポソーム同士を近接・接着したリポソーム集合体を作成した。 本研究では、隣接リポソームを接触させた上で、ビオチン-ストレプトアビジンの特異的結合を利用したリポソームの接着を行った。申請者の先行研究成果であるエレクトロスプレー技術を利用し、親水基部分がビオチン化された脂質分子を含む混合脂質を基板上に微細パターニングした。この際、パターン間隔等の配列条件について検討を行うことで、脂質パターンの水和により形成されるリポソームが接触した状態で作られるようにした。接触したリポソームアレイに対して、ビオチンと特異的に強く結合するストレプトアビジンを加え、リポソーム同士を結合・接着した。リポソーム同士が接着を維持する条件を探索するため、ビオチン化脂質の混合比率や、ストレプトアビジンの散布量について検討を行った。リポソーム同士の接着時の経時変化から、リポソーム膜の曲率が低くなり、かつ接触面積が広がる様子を観察することが出来た。また、接着したリポソーム集合体は、基板上において安定的に存在できることが分かった。静電的な力によりリポソーム同士を接触させても力の解放と共に元に戻ることが分かっており、ビオチンとストレプトアビジンによる接着では変形時の応力が経時的に緩和したものと考えられた。
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