研究課題/領域番号 |
26600067
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 健一 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50633541)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スピントロニクス / スピン流 / スピンゼーベック効果 / 逆スピンホール効果 / 異常ネルンスト効果 / 薄膜 / 磁性体 |
研究実績の概要 |
本研究は、強磁性/常磁性体多層膜をベースとした磁性超格子構造を用いることで、スピン流による熱電変換効率を劇的に向上させることを目的としている。平成26年度の主な研究成果は以下の3点であり、磁性多層膜がスピンゼーベック効果や異常ネルンスト効果を用いた熱電変換に適した系であることを見出した。
1.スピンゼーベック効果の定量的評価手法の確立: 強磁性/常磁性多層膜において、強磁性層が導電性物質である場合は、スピンゼーベック効果に加えて異常ネルンスト効果も発現する。そのため、本研究目標を達成するためには、スピン流に由来する熱起電力成分を定量的に評価するための技術が必要不可欠である。本研究では、我々がこれまでに確立してきた、磁化・電子スピン・熱流の対称性からスピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果を分離する手法に加えて、金属層の電気抵抗率の温度依存性から温度差を補正する方法、熱流束センサーを利用する方法、熱起電力の強磁場応答を測定する方法など、様々なスピンゼーベック効果の評価手法を確立した(Physical Review X誌などに論文掲載された)。これらの手法を用いることで、下記2及び3の成果を得た。 2.スピンゼーベック効果の増大原理の発見: フェリ磁性絶縁体/常磁性金属多層膜において、スピンゼーベック効果による熱起電力が界面数の増加に伴って飛躍的に増大することを明らかにした。 3.異常ネルンスト効果の増大原理の発見: 強磁性金属/常磁性金属多層膜において、異常ネルンスト効果による熱起電力が界面数の増加に伴って単調に増大することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁性多層膜を用いることで、スピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果が飛躍的に増大する振る舞いを観測した。特にスピンゼーベック効果については、熱電性能指数を決定しているすべてのパラメータを同時に改善することに成功しており、初期の目標は十分に達成された。異常ネルンスト効果が多層膜系で増大するという実験結果は当初の想定を超えたものであり、来年度はその起源の解明を最優先に進める。
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今後の研究の推進方策 |
磁性多層膜の膜厚・レイヤー数・材料の組み合わせを変えた試料において系統的にスピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果を測定し、熱起電力増大効果の起源を明らかにする。
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