本研究では、光駆動デフォーマブルミラーをホログラフィックランダムアクセスメモリとして応用することを目的としている。光駆動デフォーマブルミラーの構成は、ガラス基板に光エネルギーを運動エネルギーに変換させる吸収層、運動エネルギーによって表面変形 する反射層からなる。吸収層として、光誘起表面変形特性を有するアゾベンゼンポリマーを用いた。 平成26年度は、レーザー光照射による表面変形自体は確認されたが、微細な表面レリーフホログラムの形成は確認されなかった。この原因として、アルミニウムまたはクロムからなる反射層の張力によって吸収層の変形を抑制しているためと考えた。そこで、平成27年度では、反射層を微細な格子状に加工し、マイクロミラーアレイとすることによって、変形可能とすることを試みた。その結果、マイクロミラーアレイに表面レリーフホログラムの形成が確認された。しかし、表面レリーフの高低差は数nm程度と小さく、回折光強度は微弱であった。吸収層の変形の抑制は緩和されたが、依然として強く抑制されているためであると考えられる。そこで平成28年度では、反射層を取り除き,アゾベンゼンポリマーからの数%の反射光を用いることを検討した。反射率を犠牲にしても、大きな表面変形により、大きな回折光強度が得られると考えた。また、反射層を取り除くと、表面レリーフホログラムの再生照明光が直接アゾベンゼンポリマーに照射されるため、記録時と同一波長の光で再生すると表面レリーフが消去される問題があるので、情報を保持する際に消去されにくい条件を見つけることも検討した。 具体的には、消去のされやすさは表面形状と照射する光の偏光状態に大きく影響するので、消去されにくい構造を形成する記録条件と再生条件を探索した。その結果、記録時に信号光と参照光の強度比が大きいほど消去されにくく、またp偏光で照明すると消去されにくいことがわかった。
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