研究実績の概要 |
強相関酸化物材料二酸化バナジウム(VO2)は340K近傍にて金属-絶縁体相転移(MIT)による巨大な抵抗変化を示し、電場、格子歪み等の様々な外場によって電気伝導特性を制御することができるという点から、次世代のエレクトロニクス材料として期待されている。これ前年度までに、強相関酸化物材料の微小電気機械素子応用の一環として、マイクロスケールでのVO2フリースタンディング構造体の作製に取り組み、電気特性を評価し、薄膜デバイスに比して大幅な省電力電流誘起相転移スイッチングを報告してきた。 今回はデバイスのさらなる微細化を進める為、これまでのレーザ描画に基づくパターニングからナノインプリントによるパターニングへの手法の変更を行った。レーザーアブレーション法により作製したVO2 /TiO2(buffer) on MgO(110)薄膜において、ナノインプリントリソグラフィーとリアクティブイオンエッチングによりパターンを作製した後、リン酸によるMgO犠牲層エッチングを行うことで、線幅400nm, 及び1000 nmのVO2フリースタンディング構造の作製に成功した。作製したフリースタンディング構造の電気伝導特性は、340K近傍にて薄膜とほぼ同等の3桁程度の抵抗変化を示し、1000nm 幅のフリースタンディング細線構造において単一ドメインの構造相転移に伴うステップ状の抵抗変化を確認した。さらに400nmのフリースタンディング細線構造においては一層さらに急峻な抵抗変化および省電力スイッチングの観測に成功した。従来強相関酸化物における3次元デバイス構造はマイクロメートルサイズ(MEMS)にとどまっていた現状に対し、本研究においてナノメートル級3次元デバイス(NEMS)の作製に成功した。
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