研究課題/領域番号 |
26600076
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
谷口 貴章 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50583415)
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研究分担者 |
横井 裕之 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50358305)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化グラフェン / ナノシート / 強磁性 / 超電導 |
研究実績の概要 |
今年度は種々の還元法による酸化グラフェン還元体の合成を行い、その磁性について調べた。還元法としては、光還元、電気化学還元、化学還元、熱還元の4手法を用いた。いずれの還元手法を用いた場合でも、還元体は常磁性を示すことがわかった。ただし、常磁性に加え、強磁性成分も含むことがSQUID測定で明らかとなり、その強度は還元法に大きく依存する。特に電気化学還元により得られる還元体が顕著に大きな強磁性を示した。さらに電気化学酸化処理を続けて行うことにより、反磁性に戻ることが明らかとなり、還元により生成した局所構造が強磁性の発現場であることを支持する。XPS解析から電気化学還元体はエッジに由来するCHが高濃度で含んでいることが示唆された。また、電気化学酸化により、CHはほぼ完全に消失した。したがって、CHが強磁性の起源の候補である。今後は高分解能AFMとTEM観察により還元体の局所構造を可視化する。他にも、光還元による磁性制御やpHに依存する官能基状態などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エッジスピン状態の生成/消滅により強磁性ー反磁性を可逆的に化学制御するという研究課題で提案したコンセプトを実現させることができた。以上のようにラジカル制御による酸化グラフェン強磁性体についての研究は順調に進んでいるが、超電導化については今のところ成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
高分解能なAFMとTEMを用いて、酸化グラフェン還元体の局所構造を観察する。さらに、磁場印加c-AFMを用いて、ナノ構造と磁場依存伝導性についての関係を明らかにする。加えて、単一ナノシートについて、面内方向電子伝導の温度・磁場依存性を測定し、ラジカル種がπ電子伝導にいかに寄与するかを明らかにする。酸素還元やキャパシタンス測定を行いラジカル種の電気化学反応における役割を明らかにし、高性能な電気化学デバイスの創製に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた液体ヘリウム費、物品費、旅費の一部について他予算を充てることができたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
還元体の低温物性を測定するために、次年度使用額と翌年度分請求額を合わせて、クライオスタッド用温度コントローラの購入費に充てることを計画している。その他、旅費、消耗品の購入に使用する。
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