研究実績の概要 |
2012年に我々が発見したBiS2系超伝導体は,層状の結晶構造を有する層状超伝導体であり,銅酸化物系超伝導体で実現したような固有ジョセフソン素子を実現できる可能性がある.そこで,本挑戦的萌芽研究では,BiS2系超伝導体RE(O,F)BiS2の単結晶育成に挑戦し,さらに単結晶の接合作製のための基礎物性を解明することを目指した. 第一に,RE(O,F)BiS2単結晶育成に関して,REをNdとした場合に良質単結晶育成に成功した.得られた単結晶の超伝導特性を低温・強磁場かで評価し,固有ジョセフソン素子に利用できる大きさの超伝導異方性を有することを確認した. 第二に,二つの結晶を接合するために,物性のアニール効果を研究した.その結果,400℃までのアニールでは超伝導特性は劣化しないが,500℃以上のアニールで超伝導特性は大きく劣化することが分かった.この条件のもとで,400℃以下でのクロス型接合作製(Bi系銅酸化物で用いられた方法)を試みたが,現時点で接合を介した超伝導特性の観測には至らなかった. そこで,他の接合法を提案するために,元素置換による局所的超伝導状態の破壊の可能性を検討した.その結果,Nd(O,F)BiS2のBiをSbで置換すると急激に非超伝導化することが分かった.よって,また,REサイトのイオン半径を系統的に変化させることで,化学圧力効果により超伝導特性を制御できることも見出した.よって,本研究に基づき,BiS2系超伝導体を用いたジョセフソン素子作製に有効な手法として,REサイトおよびBiサイトの元素置換効果を用いた非超伝導層形成をマイクロスケールまたはナノスケールで行うことを提案するに至った. 最後に,元素置換効果を検証する中で,新超伝導体Sn1-xAgxTeの合成に成功した.
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