研究課題
本年度は、遷移金属ダイカルコゲナイド(MX2)を代表する材料である二硫化モリブデン(MoS2)と絶縁膜との界面特性の詳細な評価を実施した。評価のためにはMoS2電界効果トランジスタ(MOSFET)を試作し、界面特性評価用の素子とした。電気的測定評価としては、まずCapacitance-Voltage(C-V)測定を実施した。SiO2、Al2O3、HfO2の3種について、電荷局在を発生させる固定電荷量の評価を試みた。固定電荷量の評価は閾値シフトの大きさを評価することで実現される。それぞれの素子において異なる閾値シフトが観測された。しかしながら、素子特性のばらつきが大きく、絶縁膜ごとの違いを示すような系統的なデータは得られなかった。このばらつきの原因を探るために、昨年度実施した実効移動度評価を詳細に進めた。そのために、実効移動度をフィッティングによって評価するモデルを確立した。このモデルを用いた評価の結果、素子間ばらつきの要因はMoS2膜自身が持つ帯電不純物によることが明らかとなった。その量は単位面積(cm2)あたり10の11乗から10の13乗個であった。なお、この結果については論文発表を行なっている。励起子局在を起こさせるような固定電荷量は、導入しても10の12乗から13乗個程度であるので、上記のような帯電不純物がMoS2膜中に存在すると、帯電不純物の影響が大きく固定電荷の効果は観測できないことが分かる。もし帯電不純物へも励起子が束縛されるのであれば、本研究で意図した局在効果が同様に発現するものと考えられる。昨年度得られた強い発光はその効果によるものとも考えられるが、現状でこれを明らかにする手段がないため、この仮説の検証は不可能であった。本研究で目指した内容を実現するためには、今後MoS2成長技術の進展により、膜内帯電不純物の削減が求められる。
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IEEE Transactions on Nanotechnology
巻: 未定 ページ: 未定
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