研究課題/領域番号 |
26600084
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
治田 充貴 京都大学, 化学研究所, 助教 (00711574)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機結晶 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
走査型透過電子顕微鏡(STEM)による有機結晶の高分解能観察の可能性を広げることは、有機デバイス等の評価手法として非常に重要な位置づけとなる。 本年度は新規設置された球面収差補正最先端透過型電子顕微鏡を用いた研究のため、実験における各種のパラメーターについて精査を行った。特に有機結晶のSTEM観察においては電子の検出角が重要なパラメーターであるため、収束角や検出角等の実験条件を詳細に決定した。また電子銃の調整を行うことで最適電流量とレンズ条件についての精査も行った。さらに高速スキャンによる画像積算を用いることによる、照射ダメージの低減を目的として、これらシステムの構築も行った。このことにより新規電子顕微鏡による有機結晶観察の基礎的な土台を整えた。
また、本年度は電子線に比較的強い塩化銅フタロシアニン結晶をモデル試料として用いることで、STEMで有機結晶を観察する上での無機結晶との違いについて精査した。特に検出角と像コントラストの関係性についてシミュレーションを併用することで詳細に評価を行った。さらにSTEM観察における無機結晶との違いについても詳細に検討を行った。特に有機結晶の場合は低角散乱暗視野法(LAADF)-STEM法を適用た場合にも、像コントラストにかなりの定量性があることがわかった。 また、有機結晶は軽元素を主として分子が構成されていることから、そのような場合に入射電子の伝搬現象(電子のチャネリング)がどのような振る舞いを示し、かつ像コントラストにどのような影響を与えるのかについても評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規電子顕微鏡の調整等には時間を要したが、初年度はシミュレーションや比較的電子線に強いモデル試料を用いた研究であったため、おおむねスムーズに研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでにSTEMでは全く観察されたことのない有機結晶検察について一つ一つの条件を精査しながら挑戦していく過程で、STEMによる有機結晶観察法を確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主に研究計画の基礎的な部分の評価であったので既にある試薬等を使用することで研究費を使用しなかった。 特に作成した有機結晶のX線による評価をする必要性が出てきたため、基金である予算を繰り越すことで次年度にX線装置購入に当てることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はいくつかの有機結晶に対して研究を行うため、試薬等の購入に使用するとともに、有機結晶の結晶性評価のため、X線装置の購入に使用する。また結果をまとめて論文投稿や学会発表等にも使用予定である。
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