本研究では走査型透過電子顕微鏡を用いた有機結晶の原子分解能観察の為の基礎研究として、有機物観察に適した観察法についての検討調査を行った。 有機結晶に特徴的な点に着目(単位胞が大きい、温度因子が大きい)し、実験と理論計算によって従来の無機結晶観察との違いについて精査した。その結果、有機無機の違いによる像コントラストの影響はほとんどなく、弾性散乱強度が強く像に干渉性の影響を与える低角散乱領域においても実は非干渉性が保持されていることが分かった。また一方で、像コントラストに一番影響しているのは原子が本来有している原子散乱因子の角度分布の元素による違いであることが明らかとなった。
|