研究課題/領域番号 |
26600090
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
名西 やす之 立命館大学, 立命館グローバルイノベーション研究機構, 教授 (40268157)
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研究分担者 |
荒木 努 立命館大学, 理工学部, 准教授 (20312126)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / InGaN / 混晶組成 / 極微領域評価 / MBE / 転位 / 不活性化 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が中心になって独自に開発した高品質InN結晶成長技術(DERI法)を基盤として、InGaNの非混和性を積極的に利用することにより、転位近傍にバンドギャップの広いナノ構造を作成し、転位の影響を抑制することを目的としている。 本年度は、特に(1)Metal-rich 条件下での非混和性発現の確認と原子層レベルの成長制御、(2)成長結晶のダメージの起源の同定と高品質化、(3)極微領域での混晶組成の決定と揺らぎの評価手法(4) 極微領域の光学特性とリーク電流の評価手法の検討に取り組んだ。 (1)についてはMetal-rich 条件下で、Gaビーム強度を変化させることによる混晶組成の制御と多重量子井戸構造の作成、均一な厚膜混晶の作成など(2)はラジカルビーム源のプラズマパワーの強さと、残留キャリア濃度と移動度などの電子的特性の相関を明らかにし、陽電子消滅による評価実験からイオン照射により発生する点欠陥導入が高品質化の阻害要因であることを示した。(3)については極微ラマン分光法によるラマンシフト、ケルビンプローブ法による表面電位測定による混晶組成と揺らぎの評価法の有効性につき目途をつけることが出来た。(4)については、SEM-CL および Conductive AFM法によりそれぞれ極微領域の発光特性、極微領域のリーク電流を測定できる見通しを得ることが出来た。 これらの研究の進展については、国際会議、国内会議などで、随時発表をしてきているが、本研究に対する関連研究者の関心が国際的に強くなってきており、イタリアで開催された第6回CIMTEC, 韓国で開催された第31回韓国・日本合同セラミックス会議、米国MITで開催されたH.C.Gatos賞受賞講演会 米国サンフランシスコで開催されたSPIEから招待講演の依頼があった。これらを含め14回の国際会議での講演を行うとともに、東北大学、筑波大学など国内の会議や研究会でも7回の講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタルリッチ成長条件を用いたDERI法によるInGaNの混晶の作成と組成の決定、極微領域の評価などについては順調に研究が進展している。成長厚さ方向、特に基板との界面における組成引き込み効果と歪の緩和などについては、X線回折を用いた逆格子マッピング評価を詳細に行うことにより理解を大きく深めることが出来た。 また、極微ラマン分光法やケルビンプローブ法による表面電位測定による混晶組成の決定については、これまであまり報告もなく新規性の高い評価手法であり、新しい可能性を見出したという点においては予想以上の進展が得られたということが出来る。 一方で目標としてきた、基板の貫通転位や表面ステップが組成揺らぎに与える影響については、実験を開始するまでに、もう少し時間を必要とする。その理由は、このような実験に使用する転位やステップを制御した基板結晶は大変貴重なもので、世界的にも限られた研究者からしか入手することが出来ない。安易な実験による失敗は許されない。 成長実験と極微評価実験の信頼度がもう少し高くなった段階で、本研究に本格的に取り組む予定にしている。この意味で全般的にみて研究はほぼ順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
混晶成長において、組成、厚さの制御性・再現性の面で一層の向上をはかる。一方、組成、発光、リーク電流のそれぞれについて、極微領域評価の制度の向上を図る。 研究協力者であるNTTの赤坂氏、京都大学の須田氏との相互交流を進め、適切な時期を見極め転位、ステップを制御した基板上への混晶成長と組成揺らぎへの影響を明らかにする実験に取り掛かる。また得られた結晶を用いてSEM-CL評価、マイクロラマン分光、ケルビープローブ評価を行う。 これらの評価結果を総合的に分析することにより、極微構造と電気的、光学的特性の相関関係を明らかにしていく。
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