研究課題
本研究の目的は、研究代表者が中心になって独自に開発した高品質InN結晶成長技術(DERI法)を基盤として、InGaNの非混和性を積極的に利用することにより、転位近傍にバンドギャップの広い極微ナノ構造を作成し、転位の影響を抑制して、InNおよび全混晶組成のInGaNをデバイスとして利用する基盤を構築することにあった。特にGaNとInNには11%の格子定数差があるため、GaN基板上にInNやInGaNを成長させる場合ミスフィット転位の形成は避けられず、発光効率やリーク電流に悪影響を与える。本研究は、この影響を抑制することを目的としたものであった。本研究の中で 1.極微領域の組成不均一性の評価方法、2.転位など結晶欠陥に対応した極微領域のリーク電流評価法、3.DERI法によりInGaNの非混和性を積極的に利用したInGaNの成長、4.そのリーク電流抑制への効果の検証につき特に重点を置き研究を進めた。1.については、ケルビンプローブ法により表面ポテンシャルを測定する方法の有効性を確認した。また2.については、コンダクティブAFMを用いてナノ領域のリーク電流を図る手法を確立し、1本のらせん転位とそこから発生するらせん状ステップが観察されるGaNの表面でのリーク電流を詳細に測定し、明確な転位及び原子ステップに対応したリーク電流分布を観測した。3.この試料の上に、DERI法を用いてInGaNの成長をV族リッチ条件およびIII族リッチ条件で成長した。4.その結果、後者の条件で成長したInGaN結晶のリーク電流は、前者の条件で成長したInGaNよりリーク電流が抑制できることを確認し、本研究で目的としたInGaNの組成分離を積極的に利用する効果が確認されたものと考えている。これらの成果は2016年10月米国オーランドで開催されたICNSにおいて報告し、注目を集めることができた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 11件、 招待講演 3件)
Semiconductor Science and Technology
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