研究実績の概要 |
本研究課題は、触媒反応を用いた新しいCVD技術を構築するため白金ナノ粒子表面で水素と酸素を燃焼させ生成した高エネルギー水分子ビームのエネルギー状態を解析すること、その解析をもとにビームを形成するラバールノズルの構造を最適化することを目的としている。具体的には、触媒反応容器内で生成し様々なノズル開口角のラバールノズルを通して真空チャンバー内に噴出する水分子ビームのエネルギー状態を理論と実験の両面から解析する。更にその水分子ビームを用いて堆積した酸化亜鉛(ZnO)膜の結晶性、電気伝導特性を調べノズル開口角の影響について調べる。その結果、最終年度であるH27年度において以下の研究成果を得た。 (1) ZnO結晶膜成長のガス供給条件から触媒容器内の反応時圧力を推定した結果、0.5atm ~ 2.0atmと推定された。この圧力条件から真空チャンバーに噴出される水分子ビームのスケーリングパラメータを求め、それをもとに平均クラスターサイズを推定したところ、スケーリングパラメータは200以下であり、平均クラスターサイズは1以下と推定された。 (2) ノズル開口角の異なる3つのラバールノズル(50°, 60°, 75°)を用いてA面サファイア基板上にZnO結晶膜を成長させたところどの開口角のノズルにおいてもZnO(0002)のωロッキングカーブの半値幅は590arcsec以下と小さく、またHall移動度も95cm2/Vs以上と大きく、開口角によらず結晶配向性にすぐれ、電子移動度の大きな結晶膜が得られた。 (3) 容量結合型MEMS圧力センサーを用いて水分子ビームの圧力を測定したところ、ノズル開口角が小さい程、圧力が大きくなることを見出したが、水分子の運動エネルギーから推定した圧力に比べ一桁以上小さな値となった。これは残留ガスの存在とセンサーホルダーによる流れの乱れが原因ではないかと推察された。
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