研究課題
本研究では、窒化シリコンメンブレンを用いたシールド機構を備えた原子間力顕微鏡(AFM)を開発し、それにより安定性および力分解能の目指すものである。これまでの研究により、透過型電子顕微鏡観察用に市販されている窒化シリコンメンブレンに集束イオンビーム(FIB)により50マイクロメートルほどの穴を設け、そこを通して探針のみを液中に浸漬し、マイカの原子分解能像を得ることに成功している。このとき、カンチレバーとメンブレンとの接触を避けるために、カンチレバーに比較的長いガラスプローブ探針を接着し、さらにその先端に電子線堆積(EBD)カーボン探針を作製した。このような工夫によって、探針のみを浸漬した状態での原子分解能観察は実現できた。しかし、ガラスプローブと液体との相互作用により、Q値が大幅に低下する問題が生じ、期待したほどの感度の向上は得られなかった。本年度は、この点を改善するために、探針の表面をコーティングすることで親水・疎水性を制御する方法や、直径の細いクオーツプローブをCO2レーザプラーによって作製する方法などを試み、Q値を従来の5倍程度まで改善することができた。また、最小力検出限界も3倍程度改善することができた。この技術は、気体が発生する可能性のある液中反応の測定を安定に実施することを可能とし、また、電位分布計測においては、電界を遮蔽することで、定量性を改善することが期待され、今後、液中AFM技術の発展に大いに役立つことが期待される。また、この技術を開発する過程において、液中高分解能観察に適したEBD探針の作製条件も最適化することができた。これは、超小型カンチレバーの実用化や再利用性の向上に貢献し、ひいては液中AFM技術の高性能化、多機能化につながる成果と言える。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 10件) 備考 (1件)
Nanotechnology
巻: 27 ページ: 415709
10.1088/0957-4484/27/41/415709
http://fukuma.w3.kanazawa-u.ac.jp/