研究課題/領域番号 |
26600107
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
関川 太郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90282607)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高次高調波 / 光電子分光 / パルス圧縮 / 分子軌道 |
研究実績の概要 |
高次高調波を用いた時間分解光電子分光は、電子分布が異なる複数の分子軌道を同時に観測することが可能である.電子分布は分子の結合を表しているので,異なる分子軌道の時間依存性を調べることにより,何時,何処で結合の切断・結合が起こる(化学反応が起こる)かがわかる.何処という空間分解情報をもつ点で,これまでの分光法では得られない情報が得られる.これを我々は時間分解分子軌道分光と呼んでいる. 以上の概念がなかなか理解されず,これまで,学会発表や予算申請において評価が低かった.そこで,今年度の目標の一つは,時間分解分子軌道分光法の認知度の向上である.そのため,学会発表を精力的におこない,研究意義に対する認知度がある程度向上したと判断している. また,実際に時間分解分子軌道分光により有意義な情報を得ることができることを示す必要がある.そのため,1,2ブタジエンやシクロヘキサジエンなどの研究を進めた.12ブタジエンにおいては,光励起による解離反応を,解離部位に局在する分子軌道の変化を観測することにより示すことができた.また,シクロヘキサジエンにおいては,光開環反応に伴い,開裂する結合を構成する分子軌道と他の分子軌道が異なるダイナミクスを示すことを実験的に見出した.このことは,一般に言われている部位で開裂していることを直接示している. 時間遅延補償分光器の限界を探るため,10fsパルスを5時間以上安定に発生することに成功した.これにより,今後,高次高調波を安定に発生することができる.これまでは,実験室の温度変化によりレーザービームの方向が不安定となり,安定に発生することができなかった.ビーム方向を能動的に制御し,安定化することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、時間分解分子軌道分光法の認知度を高めるため,12ブタジエンや13シクロヘキサジエンなどの研究を進めると共に、国内外の学会で発表を行った.スイスの国際会議での聴衆の反応はよく,研究意義を高めるという目的をある程度達成できた.また,同時に10フェムト秒パルスを長時間(5時間以上)安定に発生することに成功した.研究の意義を高め,実験も進捗しているので,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,安定に発生する10fsパルスを用いて高次高調波発生をおこなう.課題として,10 fsパルスのエネルギーが小さいことが挙げられる.パルスを分離して相関測定を行う予定だが,挑戦的研究である.
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次年度使用額が生じた理由 |
時間分解分子軌道分光法を実証することに注力したため,消耗品の購入量が当初予定より少なかった.
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次年度使用額の使用計画 |
光学部品の購入に使用する.
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