研究課題/領域番号 |
26600116
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栖原 敏明 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90116054)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光制御 / 非線形光学デバイス |
研究実績の概要 |
本研究は、強誘電体結晶ナノ光導波路形成とナノ集積非線形量子フォトニックデバイスの実現に関する実験的研究である。平成26年度は導波路形成とデバイス要素技術の研究を行い、以下の成果を得た。 1.ナノ薄膜結晶導波路: [薄膜結晶/SiO2膜/金属薄膜/基板結晶]構造のMgO:LiNbO3結晶ナノ薄膜結晶導波路を作製する技術を改善した。独自の金属膜表面活性化直接接合/イオンスライス手法において、イオン注入シミュレーション、作製条件最適化による再現性改善により、厚さ0.5~1.0μmの薄膜結晶導波路を作製する技術を開発できた。 2.チャネル結晶導波路: 薄膜結晶導波路を微細加工してチャネル導波路を形成する技術の開発に取組んだ。Arイオンエッチングによる作製において、電子ビーム直接描画への切替え、エッチング条件最適化により特性改善を行った。また並行してプロトン交換増速化学エッチングによるリッジ形成法を初めて薄膜結晶に適用し、条件最適化して断面積0.7μm×1.0μmのリッジ型強閉込め導波路の作製に成功し、理論予測に近い閉込めと損失6dB/cmの良好な導波特性を得た。 3.薄膜結晶導波路内擬似位相整合(QPM)構造:薄膜結晶の上下面にSiO2膜装荷形成した周期電極を通じて電圧パルスを印加して分極反転する独自の方法の技術確立を目指した。周期約4μmの構造の形成可能性を確認できたが、更なる短周期化と一様性改善および面積拡大が課題である。構造評価の手法として、走査型電子顕微鏡による非破壊観察や、マイクロエッチング法の開発などの成果も得られた。 4.新結晶の分極反転構造形成・導波路形成: 高光損傷耐性結晶として最近開発され入手可能となったMgO(8mol%)添加c-LiTaO3において、QPM構造の作製と一様性改善、電気光学変調器への応用、アニールプロトン交換導波路の初めての作製などの成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チャネル結晶導波路形成技術の確立において、イオンスライス薄膜結晶に初めてプロトン交換増速化学エッチングによるリッジ形成法を適用することにより、従来の導波路に比べて格段に光閉じ込め効果の強い光導波路の作製に成功し、良好な導波特性を得ている。薄膜結晶導波路内擬似位相整合(QPM)構造の形成技術確立は当初目標に比べてやや遅れているが、可能性確認と解決策の立案はできているので、平成27年度での進展が期待できる。またQPM構造の走査型電子顕微鏡による非破壊観察や、新結晶の分極反転構造形成・導波路形成技術の開発など、当初計画には含めていなかった成果も得られている。これらを基礎に、平成27年度はナノ集積非線形量子フォトニックデバイスの実現を展開できると考えている。以上を総合して、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は当初計画に従って以下の方針で研究を推進する。 1.ナノ細線結晶導波路形成技術の確立: リッジ型チャネル導波路より光閉込めの強い方形型断面を有するナノ細線導波路の作製技術を開発する。チャネル幅1μm以下のナノチャネル導波路作製に挑戦し、導波特性を評価し改善する。 2.ナノ周期擬似位相整合QPM構造形成技術の開発: 薄膜結晶導波路構造内にナノ周期の周期分極反転QPM構造を形成する技術を確立する。電子ビーム直接描画に加えて多層レジストプロセスやイオンエッチングによる高アスペクト比周期電極の採用、繰り返し正負パルス印加などの方法により、基本次数QPM新デバイスに必要な周期約300nmまでの微細なQPM構造を形成可能にすることを目標とする。その品質と有効性を超小型(デバイス長1~3mm)導波路光第2高調波(赤外、可視、紫外域)発生(SHG)デバイスの実験で変換効率を測定して高効率を得ることにより実証する。 3.ナノ集積非線形量子フォトニックデバイスの作製と評価: 新機能量子フォトニックデバイスの例として、理論解析済の対向伝搬光子対発生デバイスを初めて試作して実験により機能を実証する。まず3次QPM構造(周期約1μm)のデバイスを作製・評価した後に、作製難度は高いが高効率が期待できる基本次QPM構造(周期約300nm)のデバイス作製と評価に進む。半導体レーザ励起により対向伝搬光子対を発生し、単一光子検出器と光子相関測定システムを用いて光子対を検出・測定し機能を実証する。また同デバイスのミラーレスパラメトリック光発振器としての動作を実験的に調べる。強励起の下で出力スペクトルの測定を行うことにより、パラメトリック蛍光から発振への移行を確認する。続いて励起光波長調整、動作温度調整による出力波長同調特性を測定して可変波長機能を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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