研究課題/領域番号 |
26600117
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安藤 潤 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (40623369)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面増強ラマン散乱 / 金属ナノ粒子 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
表面増強ラマン散乱(SERS)分光法は、極めて高い検出感度、かつ検体に蛍光団などの標識を付加することのない直接検出が可能な振動分光法である。本研究では、SERSの検出感度と計測の定量性を向上することを目指し、新たな高感度計測法を開発することを目的に研究を行う。当研究の遂行にあたり、本年度は、計測を行うための顕微分光光学系の設計・試作、及び計測用の検体溶液を細分化するチャンバー作成法の設計を中心に研究を行った。SERSによる1分子計測を実現するには、検出光学系を極めて高いスループットで、かつ得られた信号光を分光検出することが可能なシステムを構築し、分光計測感度を高める必要がある。さらに、SERS計測を行うための2次元平面の基板を計測するため、レーザー光走査による分光イメージングを行う必要がある。これらの要件を満たす光学系を構築するため、分光計測部を含めた計測装置の設計を行った。設計において、試料設置部から検出部までを最小限の光学素子で構成し、検出感度を出来る限り高める光学系とした。分光検出部について、回折素子を透過配置とすることで、さらなるスループットの向上を計った。また、励起波長に532nmのレーザー光を選定した。この波長域に共鳴効果の高い金属ナノ粒子を選定する事で、高感度にSERS計測を行う事が出来る。上記の設計を元に、実際に必要な光学素子を選定し、試作を行った。今後、試作した装置で分光計測、分光イメージングが可能であることを確認し、スループットやSERS像の取得を試みる。さらに、SERS計測を行うための専用の細分化マイクロチャンバーの設計も行った。基板上に露光装置によるパターニングを行い、大量のチャンバーを基板上に形成する。パターンを形成する材質について、シリコンマイクロマシニング用の基板や、樹脂素材を検討した。設計した作製法に従い、今後実際にチャンバーの作成を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、試料の表面増強ラマン散乱(SERS)分光計測を行う分光イメージング光学系について、設計のみを行う予定としていた。実際に、レーザーの走査機構を有する高効率かつパラレルに分光計測が可能な計測装置の設計を推進できた。分光部分や光学系において、スループットを高めるため、光学素子の選定を十分に吟味の上行った。来年度の計画を前倒しし、実際に設計した装置の試作を行った。選定を行った光学素子や検出装置、光照明装置、対物レンズなどを組み合わせて光学系の構築を進めた。さらに、今年度の計画に従って、SERS計測用の細分化したチャンバー基板について作成法の設計を検討した。細分化したチャンバーを均質に形成するには、様々な困難が予想されるため、作成前に作製法について様々な可能性を検討した。今年度は、基板の材質や作製法について吟味し、基板作成の設計に注力したことから、実際の作成には至らなかった。基板作成に計画より若干の遅れがでたが、計測装置の設計、及び構築において計画以上の進展があったため、全体計画としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度構築した装置を用いて実際に分光計測を行い、計測感度やスループットに関する評価を行う。さらに、走査光学系を組みこむ事で、試料からの分光された信号光強度の空間分布を取得する顕微分光イメージングに取り組む。計測結果から、得られるイメージングのエリアや、画像取得にかかる時間などを検証する。また、表面増強ラマン散乱(SERS)を効率的に検出するための条件検討を行う。金属ナノ粒子の組成、形状、サイズなどを変えながら、最適な計測条件を模索する。計測を通して問題点を洗い出し、より高感度な計測に向けた装置の改良点についても検討する。さらに、今年度設計した細分化したチャンバーの作成に取り組む。均質に、かつマイクロスケールで基板を形成する事は、技術的な課題を複数含む。これらに柔軟に対応するため、チャンバーを形成する材質について、設計にしたがって複数の作成法を検討する。自作が困難な場合に備えて、チャンバー作成について、マイクロ加工を行う専門業者とも交渉を行いながら、研究を推進する。チャンバーの作成が完了次第、チャンバーへの分子封入法などについても検討を進める。
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