研究課題/領域番号 |
26600123
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
沖野 友哉 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (40431895)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アト秒 / 高次高調波 / 円偏光 / 光誘起磁性 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の研究計画に基づき、円偏光アト秒パルスを発生させるために不可欠である高精度位相制御装置開発のための基盤技術の開発に取り組んだ。 偏光制御アト秒パルスを発生させるためには、フェムト秒レーザーシステムの出力を偏光の直交する基本波に二分するとともに、相対位相を制御する必要があるため、光路差のドリフト評価と制御を行う必要がある。 現状でどの程度の光路差のドリフトが生じるかを定量的に評価するため、光学マウントを含むアト秒パルス発生装置の変位量の計算を行った。その結果、既存の光学マウントとガスセルの位置固定方法では、実験室内の温度変化やシステムの振動によって生じる光路差が無視できないことが明らかとなり、変位量を約一桁小さくする必要があることが明らかとなった。そこで、3DCADシステムを用いた変調量を低減できる光学マウントの設計に取りかかった。 また、高次高調波発生過程で波長変換されずに残存する基本波を、Si平面鏡を用いて吸収によって減衰させる際に、Si平面鏡が熱膨張することによって生じる位置ドリフトの定量的評価を行った。Si平面鏡の熱膨張を低減するために、ペルチェ素子を用いた高精度温度制御を行い、0.01℃以下の制御で表面温度の制御が可能となった。 さらに、ガスセル中での気体の流れおよび密度分布を算出し、最適な形状のガスセルを製作するために用いる、3 次元直接モンテカルロ法を用いたシミュレーションコードの開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画当初は、円偏光高次高調波の発生の確認までを行う予定であったが、シミュレーションコードの作成途中で、作成コードの修正が必要であることに気がつき、その修正に大幅な時間を費やした。また、当初の作成コードでは、計算時間がかかりすぎるため、複雑な形状のガスセル等のシミュレーションが困難な状況であったため、計算コードの並列化に着手した。一方で、別の研究プロジェクトの実験遂行中に、位置の能動制御を行うために用いる静電容量センサの温度依存性が大きいことに気が付き、ペルチェ素子を用いた高精度温度制御が不可欠であることが明らかとなった。アト秒空間分割型干渉計にペルチェ素子を用いた高精度温度制御を導入することによって、従来よりも1桁の光路差安定性が実現できており、本研究課題で用いる開発装置への適用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションコードの並列化による完了を行う。計算速度が不十分である場合には、研究機関の計算機の使用を考える。シミュレーションと並行して、光誘起磁性の時間分解磁気円二色性分光を行うために必要である、高空間分解能電子・イオン運動量画像計測装置を製作する。シミュレーション終了後、シミュレーションに基づいたガスセルの製作を行いその性能評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値シミュレーションコードの開発に時間を大部分の時間を費やしたため、装置部品の製作を行うことが年度内にできなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
数値シミュレーションの基づいた装置部品の製作に用いる。
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