本年度は、昨年度に引き続き円偏光アト秒パルスを用いた円二色性分光を実施するための光源開発手法の検討と運動量画像計測装置の開発を行った。レーザービーム位置の動的制御によって24時間以上の間、ビームポテインィングが1 microrad以下まで制御できることを確認した。研究期間を通して、集光領域において円偏光を発生する方式の導入を検討したが、光学定盤の場所場所における温度変化等に起因するレーザービームのポインティングの変化による光学経路の時間変化によって、集光領域においてビームを重ね合わせるに至らなかった。一方、運動量画像計測装置については、当初は、固体薄膜試料の円二色性分光を行うための装置として開発を行ったが、試料の導入条件および励起およびプローブ光の導入位置を変化させることによって、固体試料のみならずキラル気体分子試料における二色性分光が実施可能な形へと設計変更を行った。気体試料の観測モードにおいては、近赤外光を用いてイオン運動量画像の観測を行い、イオン光学シミュレーションソフトウェアで設計通りの分解能が達成できていることを確認した。一方、固体薄膜試料の観測モードにおいては、試料位置の2次元走査が可能であることを確認したが、真空装置の到達圧力が10-6 Pa台と不十分な状況であり、真空度の改善を必要とする。研究期間を通して、円二色性分光を実施するまでは至らなかったが、今後運動量画像計測装置の到達真空度の改善等の装置の改良を行うことで、真空紫外および極端紫外領域の円偏光パルスを用いた円二色性分光を実施する。
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