研究課題/領域番号 |
26600126
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白谷 正治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (90206293)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ / ナノ粒子計測 / ドリフトチューブ / 水晶振動子 / 電場摂動 |
研究実績の概要 |
本研究では、水晶振動子マイクロバランスを用いたナノ粒子計測法を発展させてナノ粒子の輸送の動的振る舞いを利用することで、ナノ粒子のサイズ・密度・帯電量とフラックスの計測を可能にする従来にないコンパクトなドリフトチューブ型ナノ粒子検出法を創成して、プラズマ中のナノ粒子の振る舞いに関する新たな学術基盤を構築することを目的とする。平成26年度は、コンパクトドリフトチューブ型ナノ粒子検出法の創成の要素技術である、水晶振動子型ナノ粒子計測法についての基礎研究を行った。 まず、高密度ヘリコン水素プラズマ装置においてナノ粒子除去フィルタのナノ粒子除去率評価及び堆積のその場計測を行った。高密度ヘリコン水素プラズマ中で、プラズマと壁相互作用で発生したナノ粒子及びラジカルをナノ粒子除去フィルタ上面及び背面に堆積した。堆積膜のTEM観察より各面のナノ粒子面密度を求めたところ、体積換算したナノ粒子除去率は94.2 %であることを明らかにした。この結果は、本実験で用いるプラズマにおいても水晶振動子式ナノ粒子計測法を適用可能であることを示している。 次に、電場によるナノ粒子の振る舞いを明らかにするため、低抵抗シリコン基板に直流バイアスを印加し、ナノ粒子堆積状況と光学特性の相関を調べた。負バイアスを印加した場合の反射率が接地した基盤よりも高い事を、またAFMを用いた表面粗さの減少とともに反射率が増加することを明らかにした。この結果は、本実験で用いるプラズマから基板へと輸送されるナノ粒子は負帯電していることを示唆している。これらの結果は、ドリフトチューブによるナノ粒子輸送制御が可能であることを示している。 最後に、得られた知見を基に、電場とナノ粒子フラックスの見積を推定し、電場を印加する電極や入射口のサイズ等を見積りドリフトチューブを設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成26年度、電場摂動による小型ナノ粒子ドリフト速度計測法の確立について研究する予定であった。これに対して (1)高密度ヘリコン水素プラズマ装置においてナノ粒子除去フィルタのナノ粒子除去率評価及び堆積のその場計測を行い、本実験で用いるプラズマにおいても水晶振動子式ナノ粒子計測法を適用可能であることを確認した。 (2)電場によるナノ粒子の振る舞いを明らかにするため、低抵抗シリコン基板に直流バイアスを印加し、ナノ粒子堆積状況と光学特性の相関を調べた。その結果、本実験で用いるプラズマから基板へと輸送されるナノ粒子は負帯電していることを示唆する結果を得た。この結果はドリフトチューブによるナノ粒子輸送制御が可能であることを示している。 (3)得られた知見を基に、電場とナノ粒子フラックスの見積を推定し、電場を印加する電極や入射口のサイズ等を見積りドリフトチューブを設計した。 以上の結果より、ドリフト速度計測法を確立するには至っていないが、実験遂行にあたって基盤となる要素技術の確立やドリフトチューブの試作品製作のための情報収集が完了したことより、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に引き続き、電場摂動による小型ナノ粒子ドリフト速度計測法の確立について研究する。 (1)2枚の電極で構成された、電場によるナノ粒子輸送制御装置を作製し、まずは直流電場の場合のプラズマと壁相互作用で発生したナノ粒子の輸送制御装置内での輸送を調べる。実験後にそれぞれの電極に輸送されたナノ粒子のサイズ・密度を計測し、輸送制御装置内でのナノ粒子の軌道を明らかにする。この際、輸送制御装置入り口から入ってくるナノ粒子の輸送方向を輸送制御装置に垂直にコリメートする必要がある。またコリメートした場合のナノ粒子フラックスの減少とのトレードオフを考慮に入れる必要があるが、トレードオフについての見積は平成26年に終了している。 (2)ナノ粒子輸送制御装置に水晶振動子式ナノ粒子計測装置を設置して、ナノ粒子量のその場計測をおこなう。 (3)電極に高周波電圧を印加した場合の、ナノ粒子輸送状況を計測する。印加する電場の周波数や振幅などに対するナノ粒子の輸送状況を明らかにして、コンパクトドリフトチューブによるナノ粒子計測を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の旅費使用計画に対して、出張時の旅費削減の努力を行い予定よりも少ない額で出張することができた。余剰金額を研究遂行のため、平成27年度の消耗品費として使用するために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の全てを、研究遂行のための消耗品費として使用する。
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