研究課題/領域番号 |
26600128
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
杤久保 文嘉 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (90244417)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放電プラズマ / ミスト / 液相反応 / ナノ粒子生成 / 粒径計測 / 静電気応用 |
研究実績の概要 |
本研究はプラズマ中に導入したミスト内液相反応を反応場として利用することで、金属ナノ粒子の均一・高速生成を実現することを目的としている。そのためには、安定したミストの供給、安定したミスト含有プラズマの生成、ミストの挙動の正確な把握が必要である。よって、平成26年度前半で、ミスト生成部の作成、光散乱計測によるミスト計測システムの構築、平成26年度後半から平成27年度前半でプラズマ部の生成、ミスト含有プラズマの放電特性とミスト挙動の調査を行う計画とした。 ミスト計測システムとして、供給されたミストに対し、散乱面に平行または垂直に偏光されたレーザー光を入射し、その散乱光の角度分布を計測するシステムを構築した。 ミスト生成部については、超音波霧化式、及び、静電霧化方式による装置の2種類を検討しており、市販の超音波霧化装置を利用したミスト生成装置を試作した。ミー散乱による理論値と前述の散乱光計測結果の比較から粒径2μm程度のミストが生成されること、配管やミストを輸送するガス流量によって粒径やミスト濃度をある程度制御できることを確認した。 ミスト含有プラズマの生成として、プラズマ内にミストを導入して強い相互作用を得るという観点より、ヘリウムガスを用いた誘電体バリア放電型プラズマジェットを試作し、この中にミストの導入を試みた。プラズマ内に直接にミストを導入する方式ではプラズマ生成が困難であったが、アフタグロー域に相当するジェット部へミストを導入した場合は安定したプラズマが維持された。 ミスト内での金属ナノ粒子生成を見据え、プラズマ照射によるバルク液相内での金属ナノ粒子の生成条件、特に、磁性ナノ粒子生成の高速生成条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度前半でミスト生成部の作成、光散乱計測によるミスト計測システムの構築、平成26年度後半から平成27年度前半でプラズマ部の生成、ミスト含有プラズマの放電特性とミスト挙動の調査を行う計画としている。全体の研究計画を踏まえたとき、平成26年度に実施した研究で最も重要となるのは、ミスト生成部の作成とミスト計測システムの構築であり、これらについては概ね達成することができた。以降はこれらを使って計測を進めることで、データの蓄積が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために今後の推進方策は以下の通りである。 (1)ミスト含有プラズマの安定生成とミスト挙動の観測 プラズマ支援ミスト内液相反応による金属ナノ粒子の均一・高速生成を見据えたとき、ミスト含有プラズマの安定生成は最も重要な課題であり、これを引き続き行う。平成26年度に実施した誘電体バリア放電型プラズマジェットにおけるジェット部の利用は一つの考えられる手法であり、このときのミスト挙動の計測を行う。一方、より大きなミストプラズマを得るにはプラズマ内部へのミスト供給が望ましい。よって、高電圧パルスの利用等も検討している。また、サブミクロン以下のミスト生成には静電霧化式の装置を用いるが、この場合は十分な強度の散乱光が得られない可能性もある。このような場合はフォトンカウンティング法を用いるなどの微弱光対策を講じる。 (2)ミスト内液相反応による金属ナノ粒子生成 薬品を加えたミストをプラズマ内に導入することで、金属ナノ粒子の生成を試みる。対象として塩化金酸溶液を用いた金ナノ粒子、硝酸銀溶液を用いた銀ナノ粒子、塩化鉄溶液を用いたマグネタイト粒子などを考えているが、プラズマ中のミスト表面で起こる反応、即ち、酸化反応と還元反応の何れが起こりやすいか、pHがどの程度になるかによって適する系が異なる。よって、実験と同時に、反応シミュレーションを通じて適切な系を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
光散乱による粒子計測用レーザとして、当初はアルゴンイオンレーザの購入を考えていた。しかしながら、必要な光学部品(レンズや偏光板、自動回転ステージ等)に充当できる予算が不足すること、アルゴンイオンレーザに比べて安価な半導体レーザで代替できそうなこと、の2点から再検討を行い、最終的には半導体レーザを購入して実験で使用した。また、その結果として必要となる最低限の光学部品を購入することができた。研究全体を3年計画で見据えており、平成26年度に使用しなかった予算については、当初より不足が懸念された平成27年度の物品費に充当する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の当初予算は物品費100千円、旅費400千円、その他100千円の計600千円である。物品費はガスや薬品購入に充当する予定である。TEM用マイクログリッド、放電装置の試作にも物品費が必要なため、平成26年度より繰り越した予算はこれに充当する。
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