本研究では、大気圧プラズマ中に分散したミストを反応場として位置付け、ミスト内部での金属ナノ粒子の均一・高速生成を実現することを目的とする。平成27年度までの経過を踏まえ、平成28年度は①直流グロー放電式のミスト含有プラズマによる金属ナノ粒子生成の実現、②静電霧化式のミストプラズマの挙動解析、の2点を中心に研究を進め、成果を総括する計画とした。①に関しては、直流グロー放電の周囲に、超音波霧化式装置で生成したミストを含むガスを流す方式を用いている。前年度にも実施したMie散乱光によるミスト挙動観測に加え、シュリーレン法による熱流動挙動解析を行い、ガス加熱とミスト挙動の相関を調査した。更に、ミストを生成する溶液として塩化金酸水溶液、硝酸銀水溶液をそれぞれ用い、金ナノ粒子や銀ナノ粒子の生成を試みた。透過型電子顕微鏡で観察した結果、塩化金酸水溶液を用いた場合は粒径10-20 nm、硝酸銀水溶液を用いた場合は粒径20-30 nmの粒子生成を確認した。更に、エネルギー分散型X線分析により、生成された粒子は金ナノ粒子と銀ナノ粒子であることを確認した。よって、本手法により、金属ナノ粒子を生成可能であることを示した。②については、液体を供給するための注射針と平板電極の間への直流電圧印加による、静電霧化式のエレクトロスプレー型ミスト供給装置を試作した。この時、針電極側を負極とした場合は、安定したテイラーコーンが形成され、また、コーン先端にコロナ放電を伴うことが観測された。ミストの挙動を調査するために、シート状に加工したレーザー光を用いてMie散乱光の観測を行った。その結果、電気力線に沿って安定したミスト放出が行われていることを確認した。塩化金酸水溶液、硝酸銀水溶液等を用いた金属ナノ粒子生成には至っていないが、平板電極の表面を電子顕微鏡で観測した所、粒径が制御された微粒子の付着が観測された。
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