電解質濃度が高く導電性の高い海水中でかつ20MPa程度の高圧中で再現性の良い放電プラズマ生成と発光分光測定を目的に実験を進めた。前年度の成果に基づき、大気圧下の海水(人工海水10ASWおよび天然の室戸深層水)中で、針-平板電極を用いたマイクロギャップにインパルスジェネレータのパルス電流を印加して放電を生成した。 パルス電流による放電はジュール加熱によるマイクロバブル発生と陰極のアークと考えられる特性を示し、ピーク電圧200V以下で放電可能である。低電圧動作は深海探査機への搭載に有利と考えられるが一方繰り返し放電では電極の損傷が進む。 光学系の集光効率を改善し1ショットで十分な強度の発光スペクトルが取得可能となった。スペクトルには多くのピークが含まれるため、NISTの原子スペクトルデータとの対応、および人工海水10ASWを構成する10種類の試薬水溶液を独立に放電させて分光測定し、ピーク同定を進めてきた。電極や放電セルの洗浄が必ずしも十分でなかったため、各組成が残留して混入することが課題である。 高圧海水中放電実験のため、液クロ用に開発された既成の高圧送液ポンプと高耐圧のステンレス製管継手部品を組み合わせることで、廉価で使い勝手の良い高圧(~20MPa)放電実験システムを構築した。加圧環境を安定に維持できることを確認した。高圧容器中では針-平板電極に替えてガラス基板上のプラナー型電極を用いるため、サブミクロンギャップの電極加工プロセスの開発を進めてきた。メタルマスクを用いてガラス上にスパッタしたPt膜をFIB加工するなど、いくつかの方法で電極を試作し放電時の耐久性を比較しているが、現在は電極の剥離が課題となっている。 当初予定した研究期間は終了したが、本研究をテーマにした博士課程学生がH29年度まで引き続き研究を進め、海水中放電プラズマ発光スペクトルの解析と高圧海水中放電を試みる。
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