研究課題/領域番号 |
26600132
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 啓司 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00215584)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粘性測定 / レオロジー / 粘度標準 / 電磁スピニングシステム / 粘弾性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者らが独自に開発し現在では様々な工業分野で粘性計測に用いられているEMS(電磁回転式)粘度測定システムを高精度化し、標準物質を必要としない粘性の絶対値の計測手法を構築すること、さらにその精度を向上させて世界の粘度計測の標準とするための要素技術を開発することにある。 本年度は昨年開発した自立型回転しプローブをさらに高精度化し、粘度標準として純水の粘性測定精度を向上させる試みを行った。本手法では試料を密閉環境に置いたまま粘性測定を行うことができるため、温度や湿度などの環境制御が非常に容易である。粘性の測定精度を向上させるため、試料の温度を0.1度以上の精度で制御するコントローラーを作製した。温度を変化させながら計測した結果、低粘性物質の代表である純水の粘性を0.1%以上の精度で安定して、かつ再現性良く測定できる能力を確認した。さらに試料をさらに低粘性の液体に拡張し、その精度の確認を行っている。 またこの装置の応用分野を開拓するために、ヒト血液を模した高濃度のコロイド分散液の粘性のずり速度依存性を高精度で計測した。この試料の作製には我々が独自に開発したインクジェットマイクロ分散体加工プロセスを用いている。コロイドの体積分率10%~40%の領域で得られた結果はこれまでに測定されているヒト血液の流動特性をほぼ再現しており、この結果から血管内の血液流動を数値シミュレーションで予測するための基本的な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった粘度標準としての達成目標であった0.1%精度をすでに実現し、標準の構成のみならずこれを工業プロセスへと展開する試みも開始している。
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今後の研究の推進方策 |
高濃度マイクロゲル分散体のレオロジー計測の成果を活かし、さらにこれを実際の生体材料の粘弾性計測へと応用する試みを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は気体を低粘性試料として粘性の絶対値校正を行う予定であったが、気体の減圧によりさらに低粘性の状態が実現されることが検証されたため、新たに高真空条件での実験を追加することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き気体の標準試料の購入に用いる。
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