研究課題/領域番号 |
26600133
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
有吉 誠一郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20391849)
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研究分担者 |
廣芝 伸哉 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40635190)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 物理計測・制御 / テラヘルツ分光 / 高分子材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、汎用プラスチックの構造制御や新機能発現という新たな物性研究領域を切り拓くべく、これまで未踏の光領域と称されてきたテラヘルツ光をプローブとした汎用プラスチックの非破壊分析法を確立する。具体的には、従来の破壊試験によって得られる“機械的特性”とテラヘルツ分光による“光学的特性”のスペクトル情報を統合することで、プラスチックの結晶化度や水素結合状態を非破壊で検査する技術的基礎を築く。この分光学的手法が確立すると、これまで出来なかった非破壊・非侵襲でのプラスチックの劣化解析や高次構造の解析への展開が期待される。 1年目は汎用プラスチックの静的特性解析として、様々な条件下で作成したサンプルのテラヘルツ分光試験を実施した。測定サンプルの一例として結晶構造の異なる身近な材料であるポリプロピレン(PP)に着目し、その構造とテラヘルツスペクトルについて系統的に調査した。その際、非晶質PP、結晶性のアイソタクチックPP、およびシンジオタクチックPPをそれぞれ溶解し、厚さ2 mmのペレットに成型した。また、分光測定の際には雰囲気の影響を避けるために真空中でスペクトル測定を行った。その結果、上記3種の試料でテラヘルツ光領域での吸収スペクトルが明瞭に異なることを明らかにした。現在、テラヘルツスペクトルの形状の違いについて、X線構造解析や示差走査熱量測定などの結果とともに高次構造との関係性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は平成26年10月に豊橋技術科学大学へ転任したため、東北大学所属の分担者とは距離的な制約から多少不便が発生することが予想された。しかし代表者らは、相互の効率的な出張と密接な情報交換によって、平成26年度すでに汎用プラスチックの静的特性解析の見通しを立てている。 なお、本研究課題に関連する評価装置(テラヘルツ帯フーリエ変換分光器など)は代表者とともに豊橋技科大へ移設したため、今後の研究計画の推進に際して特に支障は無いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる2年目は、未測定の汎用プラスチック材料に加え、新たな機能性ポリマー材料の静的特性解析ならびに非破壊分析への応用を目指す。 まず、静的特性解析に関しては、前年度に培ったサンプル作成法や評価法のノウハウを活かし、機能性ポリマー材料(光硬化性樹脂など)のテラヘルツ分光試験を新たに行う。また、サンプル毎に機械的特性(粘弾性、熱物性など)の測定を行うことでデータベース化する。さらに、既知のサンプルで得られた機械的特性および光学的特性の統合的な知見をもとに、テラヘルツ分光特性が未知のサンプルに対して分光測定を実施し、プラスチックの劣化状態を非破壊で分析する手法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
プラスチック特性評価に必要な物品購入時の交渉により、可能な限りのコスト削減を実施したため。
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次年度使用額の使用計画 |
非破壊でのプラスチックの劣化解析や高次構造解析への展開を目的として、機能性ポリマーや評価関連の消耗品を新たに購入する費用に充当する予定である。
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