研究課題/領域番号 |
26600136
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷部 信行 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10127904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線検出器 / 気体電離箱 / 希ガス / Coplanar電極 / アルファ線スペクトロメトリー |
研究実績の概要 |
【目的】アルファ線放出核種の定量をアルファ線スペクトロメトリーで行う場合、大面積の気体電離箱を利用すると、短時間または少量の試料からの分析が可能になる。しかし、一般的なFrisch電離箱で使用するグリッドは、製作や取り扱いが困難なため大面積化の際に問題となる。本研究では、アルファ線スペクトロメトリーへの応用のために、グリッドを使用せずにCoplanar電極を導入した気体電離箱を提案する。Coplanar電極とは、アノード上にバイアスの異なる電極(電子の収集電極と非収集電極)を交互に形成したもので、二つの電極に誘起される電荷の差を取ることで相互作用の位置に依存しないパルス波高を得るものである。 【方法】Coplanar電極を用いた電離箱の試作機を製作し、内部にPRガスを封入して、アルファ線スペクトロメトリーによる性能評価を行う。アノードとして、G-10基板上に形状(短冊、同心円、螺旋)および構造(電極幅、電極間隔)が異なるCoplanar電極を製作し、アルファ線に対するエネルギー分解能を調査する。 【成果】有効領域の異なる二台の電離箱試作機(試作機A、Bとする)を設計・製作した。試作機A、Bのアノード電極の直径はそれぞれ50、140 mmである。試作機Bには電場整形リングを三つ取り付けた。アノード電極は、短冊型、同心円型、螺旋型のそれぞれについて、電極幅2 mm、電極間隔0.5、1 mmとしたものを製作した。アルファ線を計測した結果、正規分布状の波高スペクトルが得られ、Frischグリッドと同様の効果があることを確認した。試作機Aでは、アノードの形状によるエネルギー分解能の変化は小さく、5.49 MeVのアルファ線に対して約1.58%であった。これはFrisch電離箱で得られるエネルギー分解能(約0.55%)よりも悪いため、今後エネルギー分解能向上のための工夫が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Coplanar電極電離箱の試作機を設計・製作し、実験システムの構築を完了した。アルファ線の測定実験を行い、Frischグリッドと同様の効果が得られることを示した。電極形状を変更した実験では、エネルギー分解能について大まかな傾向が得られているが、まだ一部の電極について実験が未実施であるため、次年度以降に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCoplanar電極電離箱試作機でアルファ線の測定実験を行い、Coplanar電極の構造やアルファ線源の位置によるエネルギー分解能の変化を調査する。エネルギー分解能を決定する要因について究明し、電極構造あるいはバイアス電圧などの最適化を行う。また、Coplanar電極間の静電容量がエネルギー分解能に影響している可能性があるため、大きな入力容量に対応できる低雑音前置増幅器を購入し、回路雑音の低減およびエネルギー分解能の改善を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルファ線の測定実験において、測定回路系の製作・調整に時間がかかり、実験がやや遅れた。それに伴い、一部のCoplanar電極の製作が未実施である。
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次年度使用額の使用計画 |
電極の幅や間隔の条件を変更したCoplanar電極の製作費として使用する。
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