直径マイクロメートル以下の中性子回折する微結晶を目的分子に標識し、秒レベルの時分割で中性子1分子追跡法(Diffracted Neutron Tracking :DNT)を実現することを目標に研究を進めてきた。同様の発想でX線及び電子線において1分子追跡法はすでに実現させており、本研究成果で3大量子ビ ームを用いた1分子追跡法が完成させることになる。昨年度は標識可能なナノ結晶の素材を決定するために、金ナノ結晶とダイヤモンド結晶の中性子回折評価を行った。その結果、直径0. 1ミクロンのダイヤモンド結晶の方が、非常に高感度であることをJ-PRAC(NOVA BL21)での実験で証明できた。今年度は、再現実験を行う予定で あったがJ-PRAC自身の閉鎖等の延長で再現実験のするためのマシンタイムが確保できなかった。非常残念である。記述できる成果としては、現在検討しているのは白色的な中性子利用による追跡法の確立であったが、最近、X線1分子追跡法で単色のX線においても1分子の動的挙動を計測できる原理実験に成功したので、この原理を中性子でも使えないかと討論を始めた。萌芽研究期間内に1分子の動的挙動を実測できなかったことは残念であるが、プローブの設定、及び光源の単純化など大きな進展ができたと自負している。今後も、DNTの実現を目指して研究を加速させていきたい。
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