全反射集光鏡と位相板を用いたマイクロX線渦ビームの形成について波動光学計算により検討した。具体的には、全反射X線集光鏡直前にらせん状の位相板とフォーク型の位相板を配置したそれぞれの場合について、X線集光面内における波動場を計算した。計算の際、入射X線エネルギーを6.5keV、位相板の材質を金属のタンタルとした。らせん状の位相板は、形成されるX線渦ビームのトポロジカル数が1となるように厚さ分布を与えた。位相板を配置しない場合は、半値幅600ナノメートルの集光プロファイルが形成されるが、らせん状の位相板を配置した場合は、集光ビームは中心強度を持たないドーナツ型の強度分布が得られた。また、その位相分布は、X線の進行方向に対してらせん状に分布しており、渦ビームの一般的な特徴を有していた。一方、フォーク型の位相板を配置した場合は、集光ビームの形状は位相板を配置しない場合と同じであり、ブラッグ回折による強度分布が渦ビームの特徴を有していた。これは、これまで電子線の渦ビームの形成で報告されるものと同じ現象である。フォーク型の場合はX線の波長を変えることで、ブラッグ条件が変化するため、渦ビームの形成される位置が変化するが、ブラッグスポットのみをピンホール等で切り出すことで、波長可変なX線渦ビームを形成できると言える。一方、らせん状の位相板を用いる場合は、波長に応じて位相板の厚さを変更する必要があるため、一つの位相板で波長を変更することが困難であることが分かった。
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