研究課題/領域番号 |
26600147
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
宮島 司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (50391769)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 荷電粒子ビーム / 加速器 / マクロ粒子 / 位相空間分布 / 空間電荷効果 / 電磁場解析 |
研究実績の概要 |
加速器中の荷電粒子ビームの解析においては、計算機の能力が向上した現在でも、膨大な粒子数をそのまま扱うのは難しく、系の自由度を減らして解析することが必要となっている。系の自由度を減らして荷電粒子ビームを表現する方法として、幾つかの荷電粒子を一纏めにして質量電荷比を保存した新たな古典的な点電荷(マクロ粒子)の集まりとしてビームを表現する、マクロ粒子法が広く使われている。このときに重要となるのが、元のビームの性質が保たれる自由度の数はいくらなのかということである。この問いに対して、本研究では、統計力学の手法を規範として、ビームの運動状態の精度(位相空間の分解能)と系の自由度の数の関係を明らかにすることを目的としている。 平成26年度は、マクロ粒子数を減らす操作を定式化するための新たな手法として、二粒子対変換(Particle Pair Transformation)を定義・導入した。この変換では、近接する2つの粒子を一つのマクロ粒子として置き換える。この変換を1次元と2次元の荷電粒子分布に適用し、粒子数の変換性を定量的に評価できることを確認した。 平成27年度は、この二粒子対変換をプログラムコードMATLAB上で実装し、1次元と2次元の荷電粒子分布に対して、その分布が作る静電場が変化していく過程の定量的な評価を行うとともに、理論解析可能な一様電荷分布についての解と比較し、粒子数による影響を評価することができた。本成果については、国際粒子加速器会議(IPAC15、米国)及び日本加速器学会年会(2015年)にて報告を行った。また、次の段階として、本方法を3次元分布に適用する準備を開始した。ただし、3次元化にあたっては計算量が大幅に増大するため、計算コードをMATLABからC言語に切り替え、変換の高速化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度前半は、前年度に開発した変換プログラムを利用し、1次元および2次元分布に対する解析をおおむね当初計画通りに進めることができた。解析と並行して2次元系の二粒子対変換を3次元系に拡張する作業を開始したが、当初使用していたプログラムコードMATLABでは計算速度が遅く解析時間が大幅に増大することが予想されたため、新たに高速なC言語のコンパイラを導入しプログラムの移植を行うこととした。このプログラム移植のために、3次元系の解析が遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、27年度に引き続き二粒子対変換の3次元分布への拡張を行い、自由度の数と位相空間分解能の変換規則の解析を進める。プログラムの実装では、並列処理も導入し、更なる計算の高速化を図る予定である。また、解析結果と比較するために、現実のビームに近い粒子数の運動状態を再現する粒子トラッキングプログラム開発(力技検証用、扱える粒子数を増やすことが目的)を実施する。年度後半は現実の加速器の陽子、電子ビームを対象とした粒子トラッキング計算を実施し、二粒子対変換から求めた解析結果と比較検証を行う。量子性については、多粒子が作る位相空間分布について検討を行い、光陰極電子源を例として解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析プログラムを3次元化する際に、計算コードを変更することが必要となり、プログラムの核となる部分の開発が遅れたため、プログラム実装委託の時期を遅らせることとなった。また、これに合わせて成果報告についても時期を遅らせることになった。以上の理由によって次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
解析プログラムの実装を委託するために使用する。また、これまでの成果発表のために、2016年9月に開催される国際線形加速器会議(LINAC16, 米国)に参加するための旅費として使用する予定である。
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